「ははっ。あれま~。ヒナタくんが大変なことになってるよ、アイくん」

「あれまー。そうみたいだね、あおいさんっ」


 額に手を翳しながら、同じポーズで彼らの成り行きを見守る。どうやらアイくんも、相当ノリがいいらしい。


「あぁあぁー。さすがにコズエさんは来られないんですかあ……。残念ですう……」

「ちなみに理事長も来られないみたいですね。……カオル。もしかしたら二人一緒にいるんじゃないですか?」

「レンくん! やっぱりあなたもコズエさんの水着姿が見たかったんですかあ!」

「会話のキャッチボールが全然できてないんですけど……」


 そしてなんと言ってもこの二人。彼らも今回は一緒に熱海旅行へとやってきたのだ。
 やっぱりコズエ先生と理事長は、仕事の関係で難しいみたいだったけど、お土産話を楽しみにしてると言っていたので、たくさん思い出を持って帰ろうと思ってます。


「それはそうとお、アイさんとレンくんは九条さんの脛を蹴りに行かなくていいのですかあ~?」

「え」


 さすがにあれ以上揉みくちゃにされると、そろそろ彼もキレるんじゃないかと思うんだけど……あ。また誰かに思い切り蹴られたみたい。


「え? だって俺、一つ屋根の下で一緒に暮らしてるし。大人な対応、しないとね?」

「オレは、今蹴りに行きでもしたらものすごい形相で『じゃあ体育祭の係替われ』って言われそうですし。それよりも今は、九条への嫉妬もですが、こちらへと来る嫉妬もなかなか強いのでどうにかして欲しいくらいです」


 実は夏休み前に、体育祭のスローガンや担当係を決めたんだけど、今年はレンくんと一緒に去年と同じ係をすることになった。
 その時も、ヒナタくんなんかはわたしが作ったお弁当でその係を買収しようとしてたり。他のみんなも、レンくんからなんとかわたしと同じ係を奪おうとしてたからさすがに止めたんだけど……。


「そ、そこまでみんなわたしと一緒に係したいの……?」

「というよりは四六時中、片時も離れたくないんだと思いますよ。……ほんとあおいさん、もっと選り取り見取りだったでしょうに」

「みんないい人だよ? みんな大好きだもんっ。……でも残念なことに、わたしにはヒナタくんしかいないんだ~」

「惚気ですか。……まあいいですけ」

「あおいさんあおいさんっ。かなたさんとくるみさんへのお土産も選ぼうね!」

「うんっ。二人には何がいいかな?」

「熱海は何が有名なんだろうね? 将来あおいさんを戴く身としては、きちんとしたお土産を選ばないと!」

「いつわたしはアイくんにもらわれることになったんだろうか……」

「……レンくん。あなたも頑張ってくださいねえ」

「オレが話してたのに。……アイさん、酷い」


 にしても、どうやらこの二人の恋敵ポジションは、未だに健在のらしい。レンくん、カオルくんに慰められてる。