すべての花へそして君へ②


 1.ヒナタくんの左目
 2.ヒナタくんの右目
 3.スマホのカメラ


「いっぱいじゃねえ……」

「高性能だから三つある……」

「わかった。じゃあオレが目瞑ってればいいんでしょ」


「ハイ」って。……ほんとにしたよ、彼。違うんです。そういう意味で言ったんじゃないんです。それでもカメラだけで三つあるから。


「……残るの、恥ずかしい」

「罰ゲームなんだから当たり前じゃん」

「ひ、ヒナタくんそれ、どうするの……?」

「毎日のように聞いて涙流す」

「泣くの!?」


 慌てて顔を上げたら、それはもう楽しそうな笑顔とかち合って。ブヒッと鼻を押された。そんなやりとりをしていたら、また棒を倒してしまった。
 ……ヤバい。ヤバいよ。全然学習能力のないわたしにも驚くけど。これ、完全にわたし、ヒナタくんに今ここで愛を叫ばないといけなくなったよ。……あ。違うよ! 囁くんだって……!


(まだこの観光客の前で、海へ青春っぽいこと叫んだ方がましだ……)


 んなこと思ってても、罰ゲームをすることは変わりないし、背中の冷や汗が止まるわけではない。


「……? ヒナタく」


 なので、ここからどうしようかとあれこれ考えていたときだった。何を思ったのか。彼がわたしの麦稈帽子を、そっとずらしたのは。

 ――――海が波打つ、音がする。


「海の家にイケメンがいるんだって!」

「やっば! 早速偵察に行かないと!!」


 誰かがどこかで、そんな話をしているのが聞こえる。


「……そんな顔しないでよ。砂に埋めたくなるでしょ」


 心臓の音がする。


「そんなこと、言われても……」

「早く落ち着け」

「ぅえっ!? お、怒ってる……?」

「そりゃそうに決まってるでしょ。誰がそんな顔見せびらかしたいと思ってんのさ」


 こんな顔にしたのは、紛れもなくあなたなんですけどね。というか砂に埋めたい顔ってどんな顔ですか……!
 若干不貞腐れ気味の彼は、帽子を直してくれたかと思ったら、首に掛けていたタオルでわたしの顔全体を覆ってくる。……待て待て待て。お口とお鼻まで塞がってますよ。


「ぷはっ!」

「ちょっと。まだ赤い」

「誰のせいだと思ってんの?!」

「ん? オレのせいでしょ?」

「そうだけどそうじゃない!!」


 さっきとは違う意味で真っ赤になってるんです! 死にそうだったから!! こういう反応こそ君は見たいんでしょうけどっ。
 恨めしさを込めて軽く睨むと、なぜか彼は可笑しそうに笑ったあと、すっとさっきの距離の一歩手前まで一気に距離を詰めてくる。


「オレは別に、これ(キス)なら見せびらかせてもいいけど?」


 んなこと耳元言いやがったから、慌てて麦稈帽子に隠れた。


「どーしたんですか? あおいさん」

「どうやら日焼けしたみたいなので、帽子にかくれております」

「完全に顔埋まってるけど大丈夫? 息できないんじゃない?」

「大丈夫じゃないのでちょっとほっといてください」

「じゃあ、オレが日焼止め塗りたくってあげるよ。全身に」

「もうたくってきました」

「なのにもう赤いんだー」

「……。ひなたくんが」

「ん?」

「……見せたくないって、言ったのに。赤くなっちゃった、から」

「…………」

「赤くなって……。ごめんなさい」

「いや、違え」