すべての花へそして君へ②


 どうやら、オウリくんとの会話が聞かれていたみたいで、海に到着した今、山崩しをしながら尋問に遭っています。
 砂浜にパラソルをぶっ差し、レジャーシートを敷いたところで行っている山崩し大会は、日陰になっていてわずかに涼しい。……ですが、前から何かがものすごい勢いで飛んできているのでちょっと寒いです。背中は冷や汗ダラダラです。


「も、持っておりませぬ。水着は、去年のだけで……」

「で」

「び、ビキニは体型……とか、いろいろちょっと不安だし、気になるから着ないよ、って。ごめんねって……」

「不安? 何それ。それがなかったら着るわけ」


 いやいや。不安って、あなた以外に何があるんですか何が。
 会話だけでこんな状況になっているのに、何が悲しゅうっていろいろ犠牲にしてビキニ着にゃならんのですかい。そこまでドMじゃないから。そこまでは、ドMじゃないから。
 ……言ってて虚しいな、なんか。とんだバカップルだと思われてるだろうなー。今にもチューしそうな距離で山崩ししてんだもんねー海にも入らずに。まあ、実際話してる会話もバカップルなんだけど。
 けど、目の前の御方の威圧感半端ないんだよ? 一般の皆さんはわからないでしょうけど……。
 でも、みんなはわかるんだろうね、さすがだよね。話題を振ってきたオウリくんは、さっさと遊びに行っちゃったし。もちろんそんな話をオウリくんに言いやがった二人も、逃げるように海に飛び込んで、自ら進んでサメの餌になりに行ったし……。

『……ガンバレ』

 他のみんなも、そんな目をしてわたしから逃げていったし。


「不安は、なくなることはないと思うのでってお断りしました……」

「ていうかそもそも不安って何」


 ぐ、……グイグイ来ますね、さっきから。
 取り敢えず、君のことだよと言っておいたけど、「あっそ」だって。全然この人納得してないよ……。


「ん? ……ああ。別に、怒ってないよ」

「嘘だあー……」

「え。なんでそんな不細工な顔してるの」

「不細工だから不細工にもなりますよっ」


 パンパンにほっぺたを脹らませていたら、ブチュッと潰されて変な音が口から出た。結構大きめ。……ちょっと恥ずかしいじゃないか、バカちん。


「もし怒ってるように見えるんなら、それはあおいにじゃない」

「もろわたしに言ってるじゃないですか……」

「あいつらに言ったところでどうもなんないし。シントさんもトーマもオウリも、ただあおいとかオレの反応見て楽しんでるだけでしょ」


 ……バッチリ聞こえてたんですね。でも、それならなんでわざわざそのノリに乗るようなこと……ヒナタくん、一番したがりそうにないのに。


「オレはそれであおいを弄って遊んでいる」


 遊ばれてたんだね、わたし。


「ハイまたオレの勝ち。敗者のあおいさんは一発芸をしてくださーい」


 そんな話してる間に何回負けたかな。もう一発芸の引き出しが――――