さあ行こう! 水着に着替えてレッツらゴー!


「あれ? あーちゃん、どうしたの?」


 ですがわたしは、水着ではありません。さて、どうしてでしょうか。


「オウリくん。悲しいことに、昨日の冷たいものの食べ過ぎで腹痛を起こしてしまったんだ」

「おう……」

「だからっ。今年は断念するんだっ。次は絶対入るんだ……っ」

「だから食べ過ぎないようにって言ったのに」


 ――グサッ! っと一言。そして冷ややかな視線もいただきました……。この理由も、ないわけではありません。それは皆さん、よーくそれはご存じかと。
 ……ご主人様がパーカーその他を着ろって言ったから? いえいえ、そもそも水着を着ておりませぬのです。あの子は旅館でお留守番中。
 原因は、ちょっとの腹痛腰痛頭痛に立ちくらみ。……そう。嫌な予感が的中してしまったのです。


『おう。あっちゃん、なんとタイミングの悪い……』

『あたし、そんなに泳ぐ気なかったから一緒にいるよ?』

『ユズちゃん、せっかくの海なんだ。しっかり泳いできてくれっ。わたしの分まで……っ』


 あおい、女の子になりました▼
 だから、彼にああ言ったのは、さすがにちょっと気まずかったからだ。


『どうかした? 何かあった?』


 だって、言われても男の子って、どういう反応すればいいかわかんないでしょ? わたしの勝手な想像だけど。


『熱は? 微熱はない?』
『薬は? しんどいようならキサかユズか、フロントか。フロントにもなかったら薬局まで買いに走ってくるけど』
『ん? なに? ……あ。もしかして“あっち”もない?』
『それはある? あ、そう』
『大丈夫? お腹痛い? 頭痛い? 頭おかしい?』


 こんなテキパキ平気な顔でいろんなこと聞ける人なんていないでしょ? あの御方しか。ていうか最後の余計。


「また来ようね?」

「え……? ……うんっ!」


 さっきまでのそんな会話を思い出していたけれど、オウリくんから嬉しいお言葉をいただけたので、簡単なわたしの機嫌はすぐに元通り。さすがオウリくん。わたしの癒やしの天使だ――


「あーちゃんのビキニが見たい!」

「え!? お、オウリくん!?」


 まさか! 可愛い彼がそんなことを言うなんて!


「……って言ったら着てくれるかも知れないから言ってみてって、とーくんとしんとさんに言われたあー」

「……そう」

「「……!!(ブルッ)」」


 あいつら、天使オウリくんに変なこと吹き込みやがって。今に見てろ。新必殺技で、帰ってこられないくらい沖まで飛ばしてや――


「それで? オウリが見たいとか言ったから着るんですかねービキニ」


 ……ふっ。運がよかったな。しょうがないから、新必殺技はお預けだ。普通なら今頃、お前らはサメの餌になってたぞ。この御方に、心から感謝するん――


「ていうかビキニって何。水着去年着たヤツ意外にそんなもの持ってたの。ねえ」

「ち、近えですヒナタくん……」