――ドンッ!
何かが突き飛ばされたような音で、わたしは目を覚ました。
「んん……。あ、れ? ここは……」
見慣れない天井に、ああそうか、今は旅行に来ているんだったと思い出す。そして、ゆっくりと顔を横に動かした。
「おはよう? 葵ちゃん」
右側には、なぜか腕枕をしてきているトーマさん。
「おはよう葵。朝だよー」
左側には、抱きつくように添い寝をしてきているシント。
「……え」
はい。状況が全く整理できません。どうしてこんなことに??
「いっつー……。……おい。なにしてんだよ」
そんなことを思っていたら、遠く壁の方で動く影。むっくりと苛立ちながら起き上がったのは、もちろんヒナタくんである。
「えーっと。……はい。説明をお願いします」
布団を口元まで上げながら、小さく手を挙げて、ちょっと聞いてみることに。
「朝ご飯食べるってなっても、葵ちゃんの姿がなくってー」
「え。い、今何時ですか」
「それくらいの時間ってことだよ~葵?」
「え」
き、昨日は確かに、ヒナタくんにあんなこと言われたけど、時間も時間だったから、寝るつもりなんてなかったのに……。どうやら、すっかり眠ってしまったみたいだ。とってもいい夢を見た気がする。
「……マジか」
けれど、どうやら眠っていたのは自分だけではなく、今頭を抱えている彼も一緒みたいだ。目線が合うと、ごめんと口が動く。
「それでさ~? 女性陣も遅れてたから、迎えに行ったんだけどー」
「そこに葵がいなかったんだよねー」
「それでもってー、どーでもいいけど、ほんとにどーでもいいんだけどー」
「日向くんも、そういえばいないよねーって話になってー」
りょ、両サイドからの威圧感が半端ない。
「どうしてこんな部屋にいるのかな?」
「しかも二人っきりで??」
さてどうする!? 久し振りの選択肢が出る――――
「はあ……。バレたんならしょうがない」
選択肢出る前にさっさと彼氏さんに消されたんですけど!
「どういうことかな~?」
「日向ー? さすがのお前も、こんなみんながいるところで葵ちゃんに変なことしてないよね~?」
取り敢えず、顔を赤くせずに平静を装おう。わたしが、変なことをした記憶はバッチリあるので。



