すべての花へそして君へ②


「……うん。寝よ」


 なんか、ヒナタくんの場合、引っ剥がすだけじゃ終わらなさそうだ。
 あの調子じゃあ、『スッポンポンのまま、フロントまで行ってこい。そんでもって通報されろ』って、本気で言われるかも。
 だって、言いそうな笑顔だったもんね最初。久々に見たよ。善の心がない完全悪魔……。


(そういえば、あのスイッチはなんのスイッチだったんだろう……)


 わたしのがお母さんスイッチだったから、ヒナタくんのはお父さんスイッチかな?
 そんなことを考えながら、バタンと手を広げて布団へ逆戻り。右手の方は、自分のじゃない温かさがまだ少し残ってた。


「……ヒナタくんの匂いがする」


 右側へちょっとだけ寄ると、まるでヒナタくんに包まれてるみたいだった。


「わたし、やっぱり変態だったな……」


 ……わかってたことだけど。あんな、積極的になるなんて。でもそれは、ヒナタくんが引いてたからであって……。
 いや、今こんなことでちょっとウキウキしてる時点でほんとの変態さんだけど。 わかってる。わかってるんだけど……。


(ひなたくん、あったかいっ)


 残った彼のぬくもりに包まれて。わたしはそっと、瞼を下ろした。