すべての花へそして君へ②


 そんなことであなた中断させたんですかって、顔に書いてあった。


「だ、……だって」


 わたしだけ、ふわふわして。ヒナタくんのキスに、ドキドキして。それなのに、苦しそうな顔してて……気に、なって。


「そんな顔にさせちゃって、ごめんなさい……」


 わたしのせいだと思うと、キスの度に胸が苦しくなってしまうんだ。


「ほんとにね」

「え……」


 今度は真顔だ。め、目が据わっておる……。
 じと目にビビること数秒。大きく大きく息を吐いた彼は、額へかかる髪をそっとはらう。


「ほんと。簡単に箍を外すんだから」

「……え?」


 肩を竦めながら。でも、どこか嬉しさを混ぜて。よくわからずに首を傾げるわたしに呆れたのか、でもやさしい笑顔を浮かべたヒナタくんは、またゆっくりと口付けしてきた。
 ハッキリとした答えがわからないまま、やさしく触れ合っていた唇に、吸い付くようなキスが落とされ始める。音を立てては離れ、ほんの少し溜めてはまた、啄むように触れて。何度も何度も可愛くキスをしてくる彼は、一体どんな表情をしているのだろうか。


「……うん?」


 合間に盗み見ようとしたけれど、バッチリ目が合ってしまう。でも、本当に嬉しそうな、可愛らしい笑顔に、さっきまで悩んでいたのが嘘みたいにわたしまで嬉しくなった。


「……ああ。もしかしてまだ気になってる?」

「……気になってたけど、なんかヒナタくんの顔見たらどうでもよくなっちゃった」

「さっきはオレの顔見て謝ってきたくせに」

「だって、しんどそうだったんだもん」

「そりゃしんどいよ。あんなこと言われたら、押さえつけられてるもんも押さえつけらんなくなる」

「え?」


 もう一度軽く音を立てて口付けた彼は、ごろんとわたしの隣に横になった。


「ただ、どうしようもなく好きだなって、思っただけだよ」


 と、小さく息をこぼしながら。
 そして、どこまでもやさしい彼はまたお腹を摩ってくれる。恥ずかしいのもあるんだけど、その手がどこまでも気持ちよくて温かいので、遠慮はもうしなかった。


「……うーん」


 けれど、その返答には疑問が生じた。そう思ってくれているのなら、なんであんなに苦しそうな表情を……? 


「……え。まだ言わすの……」

「……だって」

「だから、……耐えられなくなるでしょ、って言ってんの」

「……へ?」