すべての花へそして君へ②

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 それからしばらく、あまりにも温かい心地の良さにうとうとしていたら、むぎゅっと可愛く抱きつかれた。


「……っと、ごめん。寝ちゃいそうだった」

「……起こしてごめん」


 お腹にまわってきていた腕は、多分気遣っているんだろう。いつもより、ゆるくてやさしい。


「……もうお腹大丈夫になったよ?」


 だから、もっと力入れていいよ?
 わかりやすく隠した言葉に、彼はいつも通りの力を込めた。


「……邪魔して、ごめん」

「ううん? 折角いてくれるのに、寝ちゃうのはもったいなかったし」


 するとまた腕の力が加わって、ピッタリと背中が彼にくっついた。


「でも、……どうしたの?」

「……ちょっと、寂しくなった」

「え?」

「そう思ったら抱きつきたくなった」

「ひなたくん……?」

「お腹摩るとかじゃない」


 オレが、ただ引っ付きたかったんだ。

 そうこぼす彼の腕をぽんぽん。そっと、やさしく撫でてあげる。……彼を寂しがらせてしまったのは、これで三度目だな。


「わたしがこっち向いちゃったから寂しかったのかな」

「ん」

「わたしはね、こっち向いちゃってね、怖くなっちゃった」

「ん?」


 肩口からそっと覗き込んできているような気配。そちらへ向くとやっぱり彼がいて、……苦笑い。


「自分から向いちゃったんだけどね。するんじゃなかったなーって思ってたの」

「……?」

「ヒナタくんがどこにもいなくて、声が聞こえなくて、こんな風に触れられなくて」

「……ん」

「何も言わなくなっちゃったから、怒っちゃったかなって、そう思ったの」

「……別に怒ってないよ。呆れたけど」

「おう……。そうであったか」

「だって、対決ばっかじゃん」

「……? したくない? してみたくない?」

「したくない。してみたくない」


 バッサリ切られた▼


「……オレとじゃできないこと、期待したじゃん」

「……え?」


 ハッキリそう言われてしょんぼりしていたというのに、わたしなんかよりもよっぽど彼の方が落ち込んでいるような、寂しそうな声だ。


「……えっと。た、たとえば……?」

「今、……やってる」

「え?」