「でも、……それはおいておいてだよ」
――言えましょうか。
「完徹してるんなら部屋にいるだろうあおいがいたからさ、どうしたのかな? って思って」
……いいえ、言えませぬ。
「特に何もないならいいんだけど……完徹とかやってたことはあっても、基本すぐ寝るでしょ? あおいは」
自業自得だと。呆れられると。……先が読めてしまう。
「でも、今から寝るのもなんか勿体ないよね。折角、二人っきりなんだし」
さあ、どうするか。
「お仕置きも、ちょっとし足りないし」
彼はとってもやる気十分っぽいけれど。
「……ねぇあおい。このまま帰っちゃう? それとも、オレと……、する?」
何をするんだと、聞きたいところだがしかし。
――ズキン。
すみません。本当にすみません。
そんなこと言ってる場合ではなさそうでして――――
「……ぅっ」
「え。……っ、ちょっと、どうしたの……!」
チクチクと、今まで静かに攻撃していたものが、今度はまるで蹴りを入れたかのような激痛をわたしに負わせる。わかっておられるでしょうが、ただの腹痛です。
「お、おしおきは。またで、いいですか……」
「そんな律儀なこと今言わなくていいから! ……どう、したの」
息も絶え絶え。額には嫌な汗。痛みに耐えながら、自分のお腹辺りと彼の袖の浴衣をぎゅっと掴む。
……もう一回言っとこう。ただお腹壊しただけです。なんともまあ情けない情けない。けれど、本気で痛いのは事実。
「ねえっ。どうしたの。しんどいの? 痛い?」
肩をそっと押した彼は、わたしよりもつらそうな顔つきで覗き込んでくる。
汚いのに額の汗を拭ってくれたり、そっと背中を摩ってくれたり。それだけで、気分はだいぶいい。
「あ、の……ですね。部屋から出てたの、は……ちょっと、お手洗いに。行って、まして」
「お腹が痛いの? トイレ行く? 抱えていこうか? 薬は? 飲む?」
トントントンと質問攻めしてくる彼は、なんだか今にも泣き出しそうだった。それがちょっとおかしくて。……笑いたいのに痛みでそれどころじゃない。
「げん、いんはっ。たぶん。冷たいものの。食べ過ぎで……」
「わかったから。そんなのどうでもいいから。今どうしてあげたらいいか教えて」
気分はよくなっても、ただただ襲い掛かってくる激痛に、苦しくて言葉すら上手く紡げなくて。そっと寄せてくれた耳へ、なんとか告げる。
「へやもどって。おふとんにくるまってたいっ」
「うん。わかった」



