「ふ~ん。二人とも寝ちゃってるんだー」

「ほんとは、完徹しようねって言ってたんだってばっ!」

「別に疑ってるわけじゃないよ? あの二人ならしそうなことだし」


 あのあとの貪りがとっても長いこと長いこと。なんかもう、ものすごいエンジン全開の彼に――


『はい、閉じたー』
『はい。また30秒追加ねー』
『もうちょい口開けて』


 本気90%おふざけ10%で、思う存分唇貪られたからね。……マジでこの人、きっかり30秒延ばしてきたからね。
 このままじゃほんとに死んじまうと思って、それはもう頑張ったんだけど。そんな必死なのが見てて面白かったのか、上顎を撫でるように舐められたからね。そりゃまた目閉じるわいっ……! 


『ははっ。しょうがないから、勘弁してあげよう』


 努力は買ってもらいましたが、と~ってもやさしい彼は、一つも息を切らさないで爽やかに笑ってました。あはは。
 ……って違うよ! それはもういいんだよ! 今は、完徹できなかったことを話してるんだって……!!


「……ただ、起きて何してたのかなって。どうかしたのかなって、……そう、思って」


 こうやってさ? 時々さ? 年相応のさ? 可愛さというかさ?? ……そういうのがさああ……。


「ヒナタくんに殺される……」

「え。殺人罪で訴えられるの、オレ」

「んなわけないっ!」


 時々寂しそうに、しゅんってする様子とか。子どもっぽく笑う顔とか。ふとしたときにそんなのをやられてしまうと、ダメージが大きい。
 なんのかって? そりゃきゅんメーターの振れ幅が、に決まってる。
 今度はこちらが彼の肩を借りる番である。でも、彼もまた同じように頭を撫でてくれて、それがすごく気持ちよ――


 ズキ。


「ちなみに言うと、オレ別に二時間待ってたわけじゃないよ?」

「っ、え?」

「お仕置きする気満々だったから目が冴えちゃっててさ」

「え」

「それでさ、窓から外見てたんだよ。別にすることないし、オレの部屋の奴ら爆睡だったし」

「な、なるほどね……」

「そう。そしたらアイが玄関から出て行くのが見えて、そういえばなんか様子おかしかったなって思って」

「……それで、ロビーに……?」

「そうそう。起きてたのは起きてたけど、ずっとロビーにいたわけじゃないよ?」

「そう、だったんだ……」

「行こうとしたらあおいがいたから、任せておけばいっかなって。……元気そうだったし、ちょっと安心した」

「……そう、だね」


 ……そ、れは。お気遣いどうも……。