「アイ、なんて? なんかあったんでしょ」
と、言葉も一緒に。
やっぱり彼も、様子がおかしいアイくんに気が付いてたみたいだ。アイくんは、ユズちゃんのように『言わないで』とは言ってなかったし、目の前の彼も、心配してるだろうから。頭を撫でさせてもらいながら、彼の話を少し、してあげることにした。
「……援助か。まあ、アイの場合は要らなさそうだけどね」
「カオルくんも、多分無理そうだけど」
「大丈夫でしょ。あいつは心配要らない」
「ははっ。……うん。そうだろうねって、話もしたよ」
そんな風に彼から聞いた内容を伝えたのだけれど。
「……それだけ?」
「え……?」
そっと肩口から顔を上げた彼の眉間には、少しだけ皺が寄っていた。
「アイは、それだけしか言ってなかった?」
ただ真剣に。ただただ必死に。彼はそんな顔で【何か】を聞いてくる。
「アイくんの口から聞いたのは、それだけ……だったけど?」
「ほんとに?」
「え? う、うん。明日はきっと、元の元気なアイくんに戻ってるよっ」
「そう」
多分、元気なるからではなく。彼は、本当に心の底から安堵の息を漏らしていた。
「それで? 女子トークは戻らなくていいのかな? あおいちゃん」
けれどもう二呼吸後にはまるで別人。
「女子たちと思い出作りするんでしょ? みたい」
いいや、こちらこそ通常運転。
「だーかーらー、オレの方が先約だったのにそっちを優先したんだよねー? なのに、な~んでアイと一緒にお外に出てたのかな? みたい?」
「……いひゃい」
ま、まあ? こっちの彼の方が、ちょっと安心っちゃ安心だけれども……?
「ご主人様のお仕置きを後回しにしてまでそっちを取ったんだからー、……わかってるよね?」
「……!!」
びろろ~んと。ほっぺたを引っ張りながらとっても意地悪な笑みを浮かべている彼は……それはまあ、楽しそうですけどね。こっちはお仕置きとかすっぽり頭から抜けてましたって。
「目、閉じたら30秒追加ね」
まあ、逃げられませんけど。
逃げる気は、……さらさらないですけど。



