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「……百合からは、援助がもらえない?」

「はい。まあさすがに言い分もわかります。どこへ行っても。たとえ今、俺の名前を花咲が隠してくれていたとしても、俺は道明寺ですから」

「アイくん……」

「いえ。そうなるんじゃないかな~とは思っていたので、あおいさんが気にすることはありませんよ?」


 それだけ、道明寺が彼の将来に重くのし掛かっているということだ。彼自身は何もしていないというのに。させられていた、だけだというのに。


「ですから俺、農業しようかなーって」

「え?」

「それから、空手とか柔道を教えてあげたり」

「え」


 それじゃあ、まるで……。


「あくまで選択肢です。良くしてもらってる分、お返しがしたいんです」

「あいくん……」

「別に、父を責めているわけではありません。止められなかった責任も、俺にはありますから」


 ――そんなことはない。
 ……心からの言葉は、彼の真っ直ぐな瞳と綺麗な笑顔に、出させてはもらえなかった。


「日本中……いいえ。世界中を陥れようとした計画は、きっとこれからずっと付き纏ってくるでしょう」

「……そうだね」

「だったら、そんなとこから無関係な場所にいたらいいんじゃないかなって。俺が、父がいつでも帰って来られるような居場所を、つくってあげられたらいいんじゃないかなって。そう思うんです」


 諦めなどではない言葉に、ただただ悔しくなった。せっかく今、こうしてやっと、自由になったというのに。


「アイくんは……何か、したいこととかないの?」

「あ。はい。特には」

「へ?」


 けろっとしている彼は、嘘とか隠してるとか、全くそういうことではないらしく。


「小さい頃は病気がちでしたし、元気になりたいなーとか、強くなりたいなーとか」

「え」

「俺の目標は『あなたを守れるくらい強くなること』でしたから」

「あいくん……」


 本当に、それしか考えていませんでしたよ。
 彼は、そんな風に照れ臭そうに笑う。


「ですからせっかくですし。もうなんか会社とか企業とか当主とか面倒臭いですし。自由に伸び伸び。楽しそうな花咲のお二人を見て、いいな~って思って」

「その気持ちは、わたしもとってもわかるなあ」

「あ。したいこととは違うんですけど、あおいさんとはこれからも家族であって欲しいな~とは思いますっ」

「ははっ。……そんなの、当たり前だよ」