そんな独り言を言っていたら、冷たい何かがわたしの頬に触れた。


「隙がありすぎるよ。しかも女の子一人で。危ないでしょ」

「……とーまさん」


 犯人の正体は、どうやらラムネのようだ。
 よっこいせ、と声を出して隣に座った彼は、まるで悪戯が成功した子どものように、なんだか楽しげに笑う。


「結局は、日向に独り占めされたくなかったってところかな」

「……あ、あの対決の意味は?」

「ん? だから言ったじゃん。今日か明日かの対決だって」

「ど、どっちでもいいですよね……」

「そうだね」


 よくわからない。みんなあんなに本気だったくせに。


「でも、一人一人ちゃんと思い出、葵ちゃんと作れたから、それでよかったんじゃない? ……あ。信人さんは捜してたっぽいけど」

「あ。シントは放っておいていいです」

「雑だねー」


 それから彼は、「よかったらどーぞ」と。持っていたラムネを、一つくれた。


「……」


 さっきは乳製品食べて、今度は炭酸。いや、まずウコン要素ないし、もう彼女は自分の中からいなくなったわけだけど。


「出てきてくれたらそれもそれで嬉しいような……」

「どうしたの……?」


 両手で握りしめていたラムネを、ズイッと彼の目の前に突き出す。


「あのっ、……どうやって、飲むんですか?」

「え?」


 炭酸自体、あの時飲んだのかってくらい自分の記憶はないに等しい。にもかかわらず、ラムネという飲み物が初対面のわたしにとっては、なぜこんな形をしているのか。まずそれが理解し難い。


「ここにビー玉があるっていうのは知ってます。それを落とせば飲めるんですよね?」

「うん。そうだね?」


 興味津々のわたしに、彼はやさしい笑顔を浮かべている。


「……その。ど、どうやって落とすんですか? というか、そもそもビー玉は必要なんでしょうか。なかったらもっと単純な容器の形にできたものを……」

「ははっ。うん。まあそうだね」


 そんな文句を言いつつも、知りたい意欲が溢れてきて。今目の前のただのラムネに、わたしは今、興ふ……ドキドキしている。


「あれですか。指で押せばいいんですか?」

「葵ちゃんならできそうだけど、ここは正攻法でいこうね」