「ねえねえ、したいことってなに?」

「え?」

「跡を継ぐとか、そういうのは放っておいて。どうなのかなって」

「……」

「やっぱりそういうの、視野に入れて考えるのかな」

「……まあ、そうだよね」

「考えなかったら、したいことはない?」

「……う~ん。ぼやぼやしてて、自分でもよくわかってないんだよねー」

「……そうなんだ。じゃあ、わたしと一緒だね」

「そうなの? アオイちゃんが?」

「そうそう。漠然とがさ、漠然とし過ぎてさ、もはやなんじゃこりゃって感じ」

「よくわかるようでわかんないけどね」

「だからわたしも、じっくり時間をかけて見つけられたらいいなーって。そう思うんだー」

「……うん。見つかるといいねー」


 やさしく笑っている彼の奥には、隠していることがあるとすぐにわかってしまった。
 けれど彼も、家のことでいろいろあるのだろう。そのしたいことが、できないかも知れない。それを、安易に口に出したくはないのかも知れない。
 ……難しいなって思う。きっと、彼の両親も、彼のしたいことを応援してあげたいと思っているだろう。けれど、そういう縛りがある以上そうもいかない。
 だから、彼が納得した上で、きちんと出せた結果ならいいなって。……そう思うんだ。


(わたしも、……きっとそうだな)


『そろそろ帰る?』と聞かれたけど、わたしはそっと首を横に振った。そんなわたしにはじめは渋っていた彼だったけれど。


『一本道だからね? ……いっぽんみちだからね!?』


 なんとなく察してくれたのだろう。まあ念はすごく押されたけど。
 そして、彼が旅館への道を帰った今。ふと、考えたんだ。


「ねえ。みんな、わたしとお祭りまわりたかったんじゃないの?」


 あのバトルは一体何だったのかと。必要があったのだろうかと。


「いや、別に楽しかったからいいけ――……!? ひやっ!」