もし仮に、また彼女のことが好きになったとしても。弱いままなのは、嫌だから。
もう、絶対に傷付けたりなんかしない。大事な人は、この手で守りたいから。
「うん。カナデくんが、思った通りにしたらいいと思うよ?」
「うん。……自分の気持ちも、もちろん大事にしたいんだ。でもやっぱり、大事な友達の気持ちも、大事にしてあげたい」
「うんっ」
「だから、ちゃんと考えてみる。……ありがと、アオイちゃん」
「いえいえー。こんな言葉でカナデくんが苦しくなくなるなら、何度だって言ってあげますよ」
「じゃあそれは、お言葉に甘えさせてもらいますよー」
彼女につられて笑うと、今度はちゃんと笑えた。……ほんと、こうやって何度も惚れ直させるんだから。
ははっ。もう、すごいな。アオイちゃんは。かっこよくて。……やっぱり強くて。
「……強く、ならないとね」
「え?」
その強さが。……ほんと。いつも羨ましい。
「俺はね、……まだまだ弱いから」
「そんなことはない」
「え」
「そう思えたことももちろん強さだ。でも、前にも言ったよ? カナデくんは優しい。相手のことばかりを思って、君は苦しんできた。その分ずっと、相手がいると、君は優しくなれるし強くなれるんだ」
真っ直ぐ飛んでくる言葉が、ズシッと重みを増して俺に響いてくる。
「一生懸命考えたらいいよ。自分がこれから守りたい人が誰なのか。やっぱりわたしか、ユズちゃんか。それともまた、違う人なのか」
心の中の、奥の奥にまで届く。彼女のやさしい言葉に、そして笑顔に。……なんか、奥底にある“何か”が、小さく震えた。
「カナデくんの心はもう十分強いから。だから、もう十分強いから、相手を守ってあげられるんだ。相手を、きちんと思えるんだよ」
「……難しいね」
「ふふっ。もう十分強いよって言ってるだけ。その強さは、今度手を取って歩く人に、たくさん使ってあげてね」
「……うん。そうだね。そうしてあげたいって、そう思うよ」
にいーっと笑った俺に、彼女も同じように笑う。
小さく震えたそれは、すぐにもう大人しくなったけれど。俺が、本当に強いなら。いつか、その強さで大事な人を守れるのなら。……今はまだ、大事にしておこう。その、小さく震えたものの名前は、俺もまだわからないから。
ふと横を見ると、彼女は視線をシャーベットのカップへと落としていた。けれどそこにあったのは、もはやシャーベットではなくただの液体で。残ったフルーツも二人して食べてみたけど、もう全然アイスじゃなくなってて。何やってんだって、二人して笑った。
暑い暑い夏。一体何個の冷たい食べ物をダメにしてしまっただろうかと、申し訳なさそうに言う彼女に、これはこれでいい思い出なんじゃない? と。そう言うと彼女はすごく、嬉しそうな顔で笑っていた。



