「……カナデくんってさ」
「ん……?」
「ユズちゃん好き?」
「ストレートに聞くねー」
「聞かれると思ってたでしょ?」
「うん。アオイちゃんならそうすると思ってた」
「でしょうね」
「……なんかさ」
「ん?」
「こういう会話、前もしたよねーって思って」
「あ。うん。そうだね。したね」
「そうそう。あの時もアオイちゃん、真っ直ぐに聞いてくるしさ」
「あははー」
「しかも変なとこ触られたとか隠してたからさ」
「おう。そうでしたな」
「……。なんかねー」
「ん?」
「……。なんなのかねー……」
彼は膝を抱え、ベンチの上で体操座りをして俯き、こもらせながら、少しつらそうに声を吐き出す。
「……正直に言う。 ユズちゃんには悪いけど、俺はアオイちゃんがまだ好きだよ」
シャクっと、スプーンを刺して一口。
口いっぱいに広がるのは、これでもかというほど柚子の味。潮風を大きく吸い込んでも、体の中には、柚子しかない。
「ユズちゃんは友達。仲の良い友達として、好き」
「うん」
「アオイちゃんは好き。まだ、好き」
「うん」
「好意はね? すっごく嬉しい。 でもこんなんだから、素直に受け取れない」
「……」
「中途半端だなって、そう思うんだ」
「だから……ちょっとしんどい」と吐いた弱音はどこか涙声で。
「おかしいよね。なんなんだろうなーって。ほんと、アオイちゃんが聞いたら絶対怒るんだろうけど……」
「最低だなって、思うよ。自分のこと」と零した本音は、ただただつらそうでしかなかった。
膝の上に置いた腕に額を当てていた彼は、少しこちらへと顔をずらし、小さく笑おうとしている。けれどそれは、今にも泣きそうなのを堪えているようにしか、わたしには見えなかった。
「なにが、俺が手取り足取り教えてあげる、なんだろうね」と。「俺だってわかってないよ。全然」と。「彼女のことを本気で好きになったときも、君を本気で好きな今も」と。「どうすればいいかなんてこと、わからない」……と。
「教えて欲しいのは……。俺の方だよ……っ」
誰よりも純粋な彼は、本気の想いに、潰されそうになっていた。
「……ふむ。ちょっと思ったこと言ってもいい?」
「ほへ?」



