「でも、それってしょうがないんじゃない?」
「え?」
「あ」
「え……?」
そう言ったオウリ君が何かに気付いたみたい。その視線を追うと、そこには今にもこぼれ落ちそうなソフトクリームが。取り敢えず、二人して一生懸命大急ぎで食べた。
「……それは、ひーくんにも相談した?」
「うん。でも、まだ焦ることはないって。そのうち選択肢が来るよって。相談してって。言われた」
「……それだけ?」
「え……?」
バク。バク。ペロリ。
彼は最後まで食べたあと、手元に残った紙を、クシャクシャッと握り潰した。
「はあ……(ていうか何してんの。相談とかの前に、自分が言いたいことあるなら言えばいいのに)」
「……? オウリくん?」
「あ。ごめんごめん。まあ……そのさ、太陽がギラギラしてるから、あるはずの道もあーちゃんには今見えないんだよ」
「……ちゃんとあるのかな」
「うん。あるよ。大丈夫。絶対に見つかる」
「……そっか」
「だからあーちゃんは、照りつける太陽の中、しっかり目を凝らして、いろいろ自分を探ってみたらいいと、おれは思うよ?」
「……うんっ。そうだね……!」
もう、失敗したくないんだ。もう道を、絶対踏み外したくない。
「……大丈夫だよ」
「……うんっ。ありがとう! やっぱり相談してよかったよー! さすが聞き上手さんっ」
わたしもパクパクパク。最後まで食べきると、ちゃんと笑えた。
「……うんっ! やっぱりあーちゃんにはその笑顔が一番だよ!」
「ありがとー! 聞き上手に褒め上手もつけましょうっ」
声が出なかった彼。でも今は、もうとっても強い彼。その彼と二人でにっこり笑ったあとに、ゴミ箱目掛けて紙屑を投げる。
そしてもう一度、二人で笑った。仲良く入っていった、その紙屑を見つめながら。



