それから、わたしは夏みかんに。オウリくんはマンゴーにして、スプーンで突き合いっこした。今回はコーンだったので、溶ける前に食べてしまわないと。


「「おいしい~!」」


 ベンチを探し、海や砂浜が見える、少し開けた場所までやって来る。


「……懐かしいな」

「ん? どうしたの?」


 そう聞かれて指差すのは、以前彼が砂の文字でヘルプを訴えてきたところ。


(……その頃は、アキラくんが操られている感じでもなかったし、怖がってるしでよくわかんなくて……)


 でも、いろんな人から手札をもらって。『ああ。あのイヤーカフには、操作の前に一旦記憶の消去が内蔵されていたんだな』……って。きちんと理解して、救ってあげられた。


「もう、おれ声出せるよ」

「……うん」

「あーちゃんのせいなんてことはないよ。そんなこと思ったことなんてない。誰のせいでもないよ。おれが、弱かったから。強くなろうと、しようとしなかったからダメだったんだ」


 そんなことないよって。言おうとした口の前へ、指が一本、静かに立てられる。


「だから。あーちゃんには感謝してる」


 ふっとやさしい笑みを浮かべたかと思ったら、今度は「なのに……」と、視線を落として頬を膨らませた。


「おれが、ずっとあーちゃんのそばにいてあげたいなって、……思ってたのに」


 ひーくん、選んじゃうんだもん。……って。


「オウリくん……」

「悔しいけど、……でも、嬉しい」


 パクッと食べる彼は、やっぱり可愛かったけれど。……それでもやっぱり、大人に見えた。


「あーちゃんも好きだけど、ひーくんも好き。二人が好きだから、二人が笑ってたら、嬉しいな」

「……うんっ。ありがと」


 彼もまた一つ、成長してしまったんだな。……わたしは、成長できるのだろうか。


「……? あーちゃん。どうかしたの?」

「……うん。大きくなっちゃったね」

「え」

「あ。身長的な意味じゃないよ?」

「それはそれでちょっとショックだけど……」

「……なんか、中身が大きくなったなーって」

「……そうしてくれたのはあーちゃんだよ」

「わたしは、ちょっとお手伝いしただけだ。自分で変わろうと、そう決めたのは、紛れもないオウリくんだよ」