まさか、そこまで思ってくれているとは思わなかったし。……窮屈な思いばかり、だったはずだ。


「それでもオレは、あなたのおそばにお仕えしたいなって、そう思ったんです」


 決して冗談でないことだけは確かだった。だって。こちらへと向けられる彼の瞳は真っ直ぐで。逸らせな――


「とはまあ言うんですけど、あなたとずっと一緒だと、苦労もいっぱいあるだろうなと」

「それは酷いっ!」

「ははっ。冗談です。……あなたがどうされるのか。そこまで聞こうとは思いませんけど、本当に思ったのは思ったんです」

「そ、か」

「これほどまでに、自分がしたいことがあったんだなと。自分でも、驚いたくらいです」


 やさしく笑う彼は、たとえジェラートを両手で持っていようとも、なんだかすごく、大人な男性に見えた。


「でも、まわりを見てふと思いました。……このままでいいのかと」


 それは月雪のことを言っているんだろう。だから彼は……――決めたんだ。


「オレの目標は、月雪の立て直しなんかじゃありません」


 あの体力のない彼が。最近ちょっと、可愛いなって思ってた彼が。


「やっぱりあおいさん。あなたと、ずっとどこかで繋がっていたいと、それはオレの中で変わりませんでした。きっと、ずっと変わらないと思います」


 大きな何かを決めたとき。人はこんなにも、凜々しくかっこよく、成長するのだと。


「オレの最終目標は、朝日向と提携を組むことです。そして、こちらからは申し出るつもりはありません。そこはオレの意地があるので」


 年下の彼が、大人に一歩近づくその姿をわたしのこの目に、しっかり焼き付けてくる。


「必ず言わせてみせます。朝日向から月雪へ『提携を組まないか』と。それくらい、オレは月雪を大きく、土台のしっかりしたものに、してみせます。たとえ、オレの代でできなくとも。いつか……必ず」


 きっとこれは、宣戦布告なのだろう。それくらい、彼の言葉から瞳から、気迫が表れていた。


「……それは遠回しに、わたしに朝日向を継げと、そう言ってる?」

「そうしていただければ、もっとやる気が出ます」

「ぶはっ! ははっ、そっか。やる気ね、やる気っ……ふふっ」


 まだ、継ぐかどうかまでのことは話してはいない。けれど、そう言ってくれる人がいると思うと、自分も、負けていられないなって。……そう思う。
 けどレンくん? まさかとは思うけど。そう言って、もしかしてそうなるまでわたしに会ってくれないとか……。


「そんなこと言わないよね?」

「…………」

「えー。それは嫌だなー」

「で、ですが。……オレの決心が鈍ります」

「あ。それじゃあきっと、こちらからはそんなとことは組まないかな?」

「……!? ちょ、それはズルいです!」

「え? でも、緩急って大事だし。無理ばっかりも体に毒だよ?」


 ストイックなのもいいことだけど、そういう切り返しができて柔軟じゃないと……。


「きっと……まず、難しい」


 だから、無理ばかりはしないこと。真っ直ぐ進む目標があるのはいいことだけど、そればっかりになると周りが見えなくなることがあるからね。