そして現在。ガタガタと電車に揺られたわたしたちは、とある目的地へと到着。大きな荷物を抱えて、電車を降り――
「……あれ?」
降りようとしたところ、荷物を掴むはずだったわたしの手は空を掴んだ。視線を上げれば、彼がわたしの荷物を持ってスタスタと。「流石に持つよ!」と、慌ててアイくんと追いかける。
「え。……まだ持たせてくれないの。買い物袋だっていっつも持つって言うのに分けっこだし」
「でも、重い方をいっつも持ってくれるでしょ?」
「持たせらんないでしょ。流石に」
「わたしは持ちたいんだけどなー」
そして、自分の大きな鞄を肩に斜めがけしている彼は何故か、じっとこちらを見てくる。何を思案したのかと思っていれば、空いた方の手でそっと、わたしの手を握って一言。
「しょうがないから、あんたはオレでも持ってなさい」
むぎゅっと。伝わる彼の熱に、心臓がバカみたいに跳ねた。
「じゃあ、こっちの手は俺を持っててくーださい」
「……チッ」
反対側の手を握ってきたアイくん。そしてそれに舌打ちを打ったヒナタくん。……さっきとは違う意味で、なんだかいろいろ不安で心臓がドクドク言った。
そして今度は、扉のガラスに映る姿をじっと見つめ、繋いだ手を上げながら一言。
「ミクロサイズの宇宙人確保~」
「おお! かくほ~」
「うえっ!?」
しかもアイくんまで!? さっきまであんなに喧嘩売ってたのに! これはあれか? 虐めか? 捕らわれた宇宙人って言いたいのか? ん?? っていうか、つま先立ち結構つらい――――
――ウィンッ。
そして開いた扉の前には、この電車に乗ろうとしている人たち。わたしたち3人の格好を、上から下までよく見て……――バッと視線を外した。
肩が震えている。笑われた。え。そんなにわたし宇宙人に見えるんですか!?
問い質したかったけれど、宇宙人あおいはあっけなく大きな人間たちにひょいっと引っ張られ、電車を降ろされてしまいました。
「……? あおいさん? 行きますよ?」
「早く人間になりたいいぃぃ……」
「もう無理でしょ」
前は人間だよって言ってくれたのに。相変わらずツンなヒナタくんから、引ったくるように自分の荷物を奪い返した。
「……はあ。違うでしょ? あんたが持つのはこっち」
そう言いながら手を差し伸べられる。
「違いますよね? あおいさんが持つのはこっちです」
そう言いながら、勝手に手を取られてしまった。
それに完全に敵意剥き出しで睨んでいるヒナタくん。申し訳ないと思いつつ、アイくんの手はそっと外させてもらった。
「アイくんの手は持てません。ごめんね?」
「そっか。それは残念」
そして、無表情だけれど恐らく内心では『どうだ。ざまあみろ』とか思っているであろうヒナタくんの方も向いてペコリ。
「ヒナタくんの手も持てません。悪しからず」
「は? なんで」
「アイくんと仲良くしなさい」
「仲良いじゃん。知らないの? 喧嘩するほど仲がいいって――」
「アイくんも、ヒナタくんにいちいち喧嘩を売らないでください。こう見えてとってもお子様なの。すぐに食いついちゃうから」
「そっか。それもそうだね。ここは俺が、しっかり大人な対応を――」
「お子様二人なんだから! そのままほっといたら本当に喧嘩しちゃいそうなんだってばっ!」
「「……ハイ。スミマセン」」



