「とぉぉおおりゃあっ!」
「えっ、うわっ!?」
一人でぐるぐると悩んでいると、そんな掛け声と共にオレの体はくるりと回され、あっという間にあおいの上から退けられた。
「……え。お、重か」
「おもーい」
「……ごめん」
「へへ。……いいえ?」
そう言う彼女は、何故かとても嬉しそうだった。……流石はM属性。
「教えてくれて、ありがとう」
「え」
あの時。嘘をついた時よりも。くるりと体をこちらに向けた彼女は、花が咲いたかのように笑っていた。
「ヒナタくんが言ってくれたんでしょ?」
「え? ……何を?」
――どうしたって好きなんだからと。
ふふっと小さく笑う彼女に、再び治まっていた甘い熱が込み上げてくる。
「だから、怖がらせちゃったのは嫌だけど、わたしのこと好きって教えてくれたから」
――だから今、すごく嬉しいんだと。
ほんのり頬を染めて。ただそれだけで、またオレの心臓を暴れさせて……。
(……オレのこと、絶対殺す気でしょ)
そんなかわいい彼女が真っ直ぐ見られなくて。ゆっくりと視線を外しながら、彼女の方を向いたまま俯せになった。
「……あり、がと」
「え?」
小さくそう零して、慌ててベッドへと顔を押しつける。怖がっていたことを知ってもなお、悲しそうな顔じゃなく、満面の笑顔を見られたことが……。
「……すっげー、うれしい」
「……そりゃようござんした」
明るい声を聞けたことが、純粋にオレは、嬉しかったんだ。隠そうとしたことが、嘘をついたことが、本気で馬鹿らしくなってしまうくらい。
「重いって言ったのは、別に体重が重かったわけじゃないよ?」
「ふーん」
「空気が重かったから。また『ネガ日向』になりかけてたから、わたしが吹っ飛ばして差し上げたのだよ」
「ふ~ん」
「怒ったの?」
「怒ってないし」
「拗ねた?」
「どこをどうしたらそうなるの」
「かわいいね」
「それはこっちのセリ――……はあ?」
頭を撫でられる感触とともに聞こえた声に、出かけた声を慌てて止めて、抗議の声を上げつつ彼女の方へと首を回す。
「……怒った?」
「……嬉しくない」
未だに頭を撫でてくる手は、あまりにも楽しそうだったから止めることはしなかったけど。でも、男のオレはかわいいなんて言われても嬉しくないから、そこは率直に物申す。
――オレよりよっぽど、あんたの方がかわいいに決まってるじゃん。
……思ってはいても、流石に口に出しては言えない。ハードル高いなあ。



