すべての花へそして君へ①


「手、退けて?」


 わかっていたけれど答えはノー。何度も大きく頭を振っている仕草に、彼女の髪から手の隙間からちらりと見える桃色に、もう答えはわかってると言っていいけれど。


「……だめなものは、だめ」

「じゃあこじ開ける」

「っ!? だ、だめ……っ」

「オレがしたいからする」


 とは言っても、彼女なら必死になれば抵抗できるというのに。というか、力じゃまず敵わないのに。


「え。すっご。大丈夫?」

「だいじょうぶじゃないからだめっていったのに……」


 そこまで力を入れずにオープンした両手。その開いた場所にあったのは、予想以上で心配してしまいそうなほど、首まで真っ赤にした彼女。


「だったら抵抗すればいいのに」

「……べつに、いやなわけじゃないし……」


 ――だったらなんで?
 口に出していない質問に、すぐ彼女から返事が返ってきた。


「……だって、力が入らなかったんだもん……」

「今のどこに、力が入らなくなる要素が」

「知らないっ」


 被さるように返ってくる返答に、一瞬目を丸くしたものの。


(……どうしよ)


 こいつ、わざとやってんのか? やってるんでしょ。そうなんでしょ?


(お願いしますそうって言って……)


 そんなバカなことを懇願してしまうほど、オレの下で顔を逸らして、首まで真っ赤にして、小さく震えている彼女に、途方に暮れてしまいそうなほどの愛おしさが湧き上がってくる。

 というのに、ここでトドメの一発。


「だって、ヒナタくんといるだけでドキドキするんだもん」


 ……。……。……。


「やめてー……」

「っ!? ひな――」

「今は黙ってくださいお願いします」

「あ。は、はい……」


 先に許容量がオーバーしたのはオレの方。再びあおいの上に倒れ込んで、矢継ぎ早に彼女の言葉を封じた。
 元々限界なのに。さっき、ドキドキしてない……って、嘘言ってたくせに。