「手、退けて?」
わかっていたけれど答えはノー。何度も大きく頭を振っている仕草に、彼女の髪から手の隙間からちらりと見える桃色に、もう答えはわかってると言っていいけれど。
「……だめなものは、だめ」
「じゃあこじ開ける」
「っ!? だ、だめ……っ」
「オレがしたいからする」
とは言っても、彼女なら必死になれば抵抗できるというのに。というか、力じゃまず敵わないのに。
「え。すっご。大丈夫?」
「だいじょうぶじゃないからだめっていったのに……」
そこまで力を入れずにオープンした両手。その開いた場所にあったのは、予想以上で心配してしまいそうなほど、首まで真っ赤にした彼女。
「だったら抵抗すればいいのに」
「……べつに、いやなわけじゃないし……」
――だったらなんで?
口に出していない質問に、すぐ彼女から返事が返ってきた。
「……だって、力が入らなかったんだもん……」
「今のどこに、力が入らなくなる要素が」
「知らないっ」
被さるように返ってくる返答に、一瞬目を丸くしたものの。
(……どうしよ)
こいつ、わざとやってんのか? やってるんでしょ。そうなんでしょ?
(お願いしますそうって言って……)
そんなバカなことを懇願してしまうほど、オレの下で顔を逸らして、首まで真っ赤にして、小さく震えている彼女に、途方に暮れてしまいそうなほどの愛おしさが湧き上がってくる。
というのに、ここでトドメの一発。
「だって、ヒナタくんといるだけでドキドキするんだもん」
……。……。……。
「やめてー……」
「っ!? ひな――」
「今は黙ってくださいお願いします」
「あ。は、はい……」
先に許容量がオーバーしたのはオレの方。再びあおいの上に倒れ込んで、矢継ぎ早に彼女の言葉を封じた。
元々限界なのに。さっき、ドキドキしてない……って、嘘言ってたくせに。



