すべての花へそして君へ①


 ――のも一瞬。


「ねえ。さっきなんで全然こっち見なかったのか教えて」

「え?」

「なんで大股10歩、ちゃんと数えていい子で待ってたの」

「え」

「……なんで、何も聞いてこなかったの」

「……」

「なんで……オレの言ったこと、すんなり受け入れたの」

「ヒナタくん……」


 オレは、怒濤の質問攻めを実行。言葉を紡ぐほど、自分の不甲斐なさが湧き上がってくるというのに、それを掻き消すようにこいつへの想いが溢れ出していた。


「わかってるつもりだった。でも、それはほんとに『つもり』だったかも知れないと思って。……今、ちょっと悔しい」


 ちょっとどころじゃない。悔しくて悔しくて、自分が情けない。
 こいつは、オレのことをわかってくれたのに。オレは、こいつのことを何一つわかってなかったんだから。


「だから……教えて。カエデさんに負けたとか、マジで嫌だから」

「……ヒナタくん」


 それだけで「そんなことないよ」と言われているようだった。そのやさしさが、……今だけは無性に苦しい。


「そう言ってくれるってことは、ちゃんとわかってくれたんだね」

「……。あー。悔し。ほんと……やだっ」


 でも、ハッキリと彼女から言われた今は。


「ありがとうございましたって、言えた? ごめんなさいは、いらないって言われたでしょう」

「……はあ。あー……悔しいな、もう……」


 それ以上に、嬉しさが込み上げていた。
 こいつに……勝とうと思う方が無理な話で。別に勝ち負けじゃないんだけど。でも、こいつにだけは負けるのも悪くない。だから、あおいの側は心地いいんだ。