「うっわ! ひなたくんっ!?」
半ば突き飛ばすように、彼女の腕を引きながら背中を押す。その勢いに、彼女は踏ん張ることもせずにそのままベッドへとダイブ。これはまた、上手に顔面で滑って……。
「せめて手突いて顔ぐらい庇いなよ」
せっかくのかわ……不細工な顔が、もっと不細工になったらどうすんのさ。
「いてて……。い、いやそもそもヒナタくんが――、……!」
「まあそうだろうね」
体を起き上がらせながらこちらに文句を言おうとしていたあおいへ、一気に距離を詰める。
「……えっと」
ベッドに片膝を、中途半端に起き上がった彼女の両側に手を突き、深く息を吐きながら彼女の肩へと頭を預ける。その中途半端な姿勢がつらかったのだろう。体をもう少しだけ起こしたあおいは、そんな状態のオレの頭をそっと撫でた。
「……どうしたの? ヒナタくん」
柔らかくてやさしい声に、今以上近づけはしないのに、もっともっと近づきたくなる。
「……どうしたの? カエデさんに、何か言われた?」
次に弾かれた音は、少し心配を混ぜたものだった。言われたけれど、別に心配をするようなことじゃない。
「……まあ、ある意味心配した方がいいかも知れないけど」
「え……。な、何か今、よからぬ声が聞こえたような」
「めちゃくちゃ条件が揃ってるけど、流石に襲わないよ」
「じょ、条件……? お、おそ……」
「多分」
「たぶん!?」
ものすごくいい反応に、ははっと小さく笑い声を漏らしながら、彼女の首元へとゆっくり頭をずらした。
「すっごいドキドキしてる」
「……!?」
「なに。期待した?」
「してないっ! ど、ドキドキもしてな――」
「嘘ばっかり」
「……!? ヒナタくんっ、どこ触って……」
「ん? どれだけ心拍数が速いか測ってあげようと思って」



