すべての花へそして君へ①


 けど、ふう……と息をついたあとのヒナタは、さっきよりはだいぶ落ち着いたように見えた。


「すみません。……なんですか?」


 流石に不味いと思ったんだろう。今のままアオイちゃんに飛びついて、嫌われるかも知れないって思ったんだろうな。……んなわけねーのに。
 まあ、気持ちはわからねーことないからな。これは、俺からちょっとした労いだ。


「今のそんなお前に、とっておきのことを教えてやろう」


 ニヤリ。そんな笑みを携えて。


「お前のお悩みも、きっとこれで解消するだろうよ」


 常に彼女のことを考えているこいつなら有り得るだろう。だから俺は、そんなバカにとっておきのことを教えてやった。


「どうするかはお前次第。まあお前がどうするかなんてこと、俺じゃなくても予想が付くだろうがな」


 けれど、俺の予想に反して未だに目の前にいるヒナタへ、小さく目を丸くした。てっきりもう飛び出していってると思ったのに。


「取り敢えずは、予想通りじゃなかったってところですかね」

「あ?  ……ああ。そうだな」

「それじゃあもう一つ。恐らく、全然予想してないこと言っていいですか」


 続けざまに紡いだ言葉に、俺はただただ首を傾げた。こいつが、なんでそんなことを言ってきたのかわからないからだ。


「なんですか。ただお使い頼んだだけじゃないですか」


 いや、別にいいけどよ。あいつらも無事帰ってきたことだし、心配事もなにもねーけど。


「今このタイミングで、なんでそんなもん……」

「食べたかったんで」

「パシリじゃねーか」

「それと……」

「ん?」


 ぼそぼそと。ポケットに手を突っ込みながら、だらりと適当に立ってやがるこいつは呟く。


「……あいつも変わったんで」

「は?」

「オレも。……変わらないと」

「……そうか」


 それで? お前はこれを食べたら何かに変身でもするのかよ。……まあ、冗談はこのくらいにしておくか。