(それでまあ、カエデさんに図星を言われたわけだけど)
だってもう、まともに見られる自信がなかったし。見たら見たで、いろいろ思い出して顔が変になることは必至。さらに言うと、暴走してカエデさんの前でさえもいろいろやらかしちゃうのも必至。もっともっと言うと、本気で持って帰るか、一室マジで借りること必至。
それくらいもう……。もうっ、いろいろヤバいんだって。限界なんです。
(……でも、それでもやっぱり、嫌われたくない。幻滅されたくない。格好悪く、思われたくない)
オレの言いつけ通り、本当に10歩先で夜空を見上げているあいつをもう一度横目で見る。足りない言葉を酌み取ってくれて……既にこれだけ助けてもらっているのだから、本当にこれからはそればっかりになりそうだ。
そうはならないように。それには、気を付けておくことにして。
「……ほんと、そういうとこも好きなんですよ、オレ」
彼女を長く待たせることはしない。こんなオレを、見て欲しくなんかない。
「オレは、あいつみたいにお礼は言えません。謝ることばっかりです」
きっとあいつは、オレがこういうことをするとわかってたんだろう。
「カエデさん。駒とか言って、すみません」
わかっていて。わざと見ないようにしてくれて。
「皇の執事で柊では秘書で、ユズの父親で尚且つ学生の頃はカナタさんと乾さんとは友達とか。……いいポジションとか、めっちゃ思ってました。すみません」
「思ってたのかよ」
「録音だって、手紙のことだって。……待ち合わせの場所とか時間とか、ちょっといじって遊んですみません」
「遊ばれてたのかよ」
やっぱりオレは、あいつには敵わない。わかってくれる、あいつが何よりも大事だから。
「たくさんたくさん。……すみませんでした」
格好悪いオレなんか……『なんか』って言ったら怒るんだろうけど。男心をわかってくれた彼女に感謝しつつ、『男同士の話』という名の謝罪をするために。オレは深々と、カエデさんに頭を下げた。



