すべての花へそして君へ①


 ……けど、ですよ。


『わたしも。……一緒だよ』

『……! ……うん。オレ、も』

『へへ』


 オレがしたのと同じように。そんな言葉と一緒に手を握ってきた彼女が、……もう無理だった。
 ちょっと、しばらく直視できないくらいに……無理だった。本気で、みんなとかどうでもいいくらい、持って帰りたかった。……ダメって言われたから諦めるけど。また今度とか言われたから、ちょっとドキドキしてる自分もいたりする。


(まあ、一個思ったことと言えば)


 オレがこいつにしてるのは、女扱いでも何でもない。
 紳士……といえばそうなのかも知れないけど、このオレが紳士とか無理に決まってるでしょ。できたとしても偽りでだけだって。
 オレが、本気でできるのはこいつにだけ。たった一人にだけ。やりたいのは女扱いなんかじゃない。


『彼女にはなれない』


 そう言われた時は、ほんの一瞬血の気が下がるような感覚もあったけど、足りない言葉をすぐに見つける。

【まだ】

 向けられた好意に、きちんと返事をしなければ、みんなにもオレにも悪いと思ったんだろう。
 正直言って、みんなの立場だとしたら、言って欲しくないと思う。けど、それでも彼女がそうすると決めたのは、紛れもなくオレのため……なんだろうな。

 そう言われて、嬉しくないわけがない。けれど、そうされて彼女が傷付いてしまうのではないか心配でもあった。でも、それでも揺るがない彼女に、一度決めたことを曲げない彼女に、オレが勝てるわけもない。


(オレが、どうこうできる問題じゃないのはわかってる……)


 それでも、もし何かあれば。オレはもう、躊躇わない。