『そろそろ限界だから、オレも入れて』
あっという間にほら限界。あおいに掛けていたコートの中に入れてもらったと同時、そんなことを言ってくるかわいい口を塞ぎにかかる。
『……お願い、だからさ』
私情っていうのは、外ってこと。
『……そういうこと、言うのやめて……』
限界だった。でも外だった。
レンに釘を刺されてもなお、結局は外でこういうことをしてしまったんだけど……辛うじてコート『中』だから、これはセーフってことで。そういった意味での私情。
……ほんと。堪え性のない自分に、呆れてため息しか出なかった。
(だから、その悩みにオレが答えられるとしたら……)
そんなのもう、ただひとつしかない。
【オレも】
オレは、あおいみたいにストレートに言えない。だから、言えないなら言ってもらえばいい。今はそれだけで十分、こいつには伝わるだろう。そりゃもちろん、いつかは言ってやる気満々だけど。
(でも、どうせ泣くんだろうな。この調子だと)
その涙は嫌いじゃないけど……どうせなら、笑った顔がオレは見たいんだけどな。バカみたいに笑って、飛び跳ねて。見た目に反して子どもっぽくて。
『……ほんと、変わってる』
こんな、不器用なオレでさえも。素直に言えないことも、受け止めて、幻滅しないでくれて。
『はあ。……ほんと、格好つかない』
オレよりよっぽど、かっこいいけど。
『わたしの大好きなヒナタくんを、『こんなオレ』って言って欲しくないなって』
ダメなところは、ちゃんと教えてくれて。
『わたしは、……嫌じゃないよ?』
オレが待ち望んでいた言葉を、ちゃんと言ってくれる飛び切りやさしいこいつが。
『……オレも』
やっぱりオレは、どうやっても好きなんだ。



