すべての花へそして君へ①


『そろそろ限界だから、オレも入れて』


 あっという間にほら限界。あおいに掛けていたコートの中に入れてもらったと同時、そんなことを言ってくるかわいい口を塞ぎにかかる。


『……お願い、だからさ』


 私情っていうのは、外ってこと。


『……そういうこと、言うのやめて……』


 限界だった。でも外だった。
 レンに釘を刺されてもなお、結局は外でこういうことをしてしまったんだけど……辛うじてコート『中』だから、これはセーフってことで。そういった意味での私情。
 ……ほんと。堪え性のない自分に、呆れてため息しか出なかった。


(だから、その悩みにオレが答えられるとしたら……)


 そんなのもう、ただひとつしかない。


【オレも】

 オレは、あおいみたいにストレートに言えない。だから、言えないなら言ってもらえばいい。今はそれだけで十分、こいつには伝わるだろう。そりゃもちろん、いつかは言ってやる気満々だけど。


(でも、どうせ泣くんだろうな。この調子だと)


 その涙は嫌いじゃないけど……どうせなら、笑った顔がオレは見たいんだけどな。バカみたいに笑って、飛び跳ねて。見た目に反して子どもっぽくて。


『……ほんと、変わってる』


 こんな、不器用なオレでさえも。素直に言えないことも、受け止めて、幻滅しないでくれて。


『はあ。……ほんと、格好つかない』


 オレよりよっぽど、かっこいいけど。


『わたしの大好きなヒナタくんを、『こんなオレ』って言って欲しくないなって』


 ダメなところは、ちゃんと教えてくれて。


『わたしは、……嫌じゃないよ?』


 オレが待ち望んでいた言葉を、ちゃんと言ってくれる飛び切りやさしいこいつが。


『……オレも』


 やっぱりオレは、どうやっても好きなんだ。