『……言われなくてもわかってるし』
取り敢えず、レンを踏み潰すことは決定。でも、正直冷静になれた。
ここは外。もちろんわかってる。わかってはいるけど、全部こいつが悪い。あおいが悪い。
完全に溢れそうになっていたものは、取り敢えず治まった。でも、いろいろ……理性が限界なのは、変わらない。ダメだとわかっていると余計、その理性の糸は脆くなる。すぐにでも、その限界は訪れる。だから、必死でそれを押し殺していた。
(でも、見せられるような顔じゃない……って)
『死にそう』とか言ってたから、てっきり真っ赤にでもなってるんだと思った。そうだと、結構確信もあったから……。
『……えっと』
だから、どうしてあおいが泣いているのか。わからなくて、驚いて……。
(……泣かせたかったわけじゃないのに)
自分の不器用さに。要領の悪さに。……腹が立った。
やりたいようにした。したいようにした。でもそれが、こいつにとってこんなふうにさせてしまうのなら……。
(まあでも、だからってやめようとは思わないけど)
謝りはする。嫌なことならやめる。でも、いい反応してくれるんだから、加減はしようと思うかな。手を繋いだだけでも軽くパニックだったし。
(……これから)
その言葉がこいつから出てきただけで、何もかも終わったんだなって、そう思えた。ただでさえ避けていた言葉を、言ってくれたことが何より嬉しかった。
(これからがあるんだ。時間はいっぱいある)
でも……やっぱ嫌だったのかな。泣いてたし。
それだったらこれからどうしよう。やりたいようにやって泣かせたら元も子もないんだけど……。
『泣いちゃって、ごめんね』
『……それは』
とか思ってたらもう本当に限界。またくっそかわいいこと言いやがって……。
(ヤバい。もう、本当に無理だ)
嬉しすぎて今にも暴走しそうだった。だって、あおいが悩んでいたこと一つ一つが、全部がもう……。
『その疑問に至っては、オレが聞いておいてよかったって。ちょっと思った』
『え』
――好きって。言葉がなくったって言われてるようなもので。



