すべての花へそして君へ①


『……言われなくてもわかってるし』


 取り敢えず、レンを踏み潰すことは決定。でも、正直冷静になれた。

 ここは外。もちろんわかってる。わかってはいるけど、全部こいつが悪い。あおいが悪い。
 完全に溢れそうになっていたものは、取り敢えず治まった。でも、いろいろ……理性が限界なのは、変わらない。ダメだとわかっていると余計、その理性の糸は脆くなる。すぐにでも、その限界は訪れる。だから、必死でそれを押し殺していた。


(でも、見せられるような顔じゃない……って)


『死にそう』とか言ってたから、てっきり真っ赤にでもなってるんだと思った。そうだと、結構確信もあったから……。


『……えっと』


 だから、どうしてあおいが泣いているのか。わからなくて、驚いて……。


(……泣かせたかったわけじゃないのに)


 自分の不器用さに。要領の悪さに。……腹が立った。
 やりたいようにした。したいようにした。でもそれが、こいつにとってこんなふうにさせてしまうのなら……。


(まあでも、だからってやめようとは思わないけど)


 謝りはする。嫌なことならやめる。でも、いい反応してくれるんだから、加減はしようと思うかな。手を繋いだだけでも軽くパニックだったし。


(……これから)


 その言葉がこいつから出てきただけで、何もかも終わったんだなって、そう思えた。ただでさえ避けていた言葉を、言ってくれたことが何より嬉しかった。


(これからがあるんだ。時間はいっぱいある)


 でも……やっぱ嫌だったのかな。泣いてたし。
 それだったらこれからどうしよう。やりたいようにやって泣かせたら元も子もないんだけど……。


『泣いちゃって、ごめんね』

『……それは』


 とか思ってたらもう本当に限界。またくっそかわいいこと言いやがって……。


(ヤバい。もう、本当に無理だ)


 嬉しすぎて今にも暴走しそうだった。だって、あおいが悩んでいたこと一つ一つが、全部がもう……。


『その疑問に至っては、オレが聞いておいてよかったって。ちょっと思った』

『え』


 ――好きって。言葉がなくったって言われてるようなもので。