すべての花へそして君へ①


 ――ゴンッ!

 ……とかなんとか思ってても、実際そう簡単には上手くいかないもの。
 しかもオレだし。そう簡単に、オレがこんなことできると思う? 答えはもちろん否。


(あー。らしくない。オレは、こんなこと言うような奴じゃない)


 頭突きを食らって目が覚めた。いや、そんなことを思ってたのもあるけど、頭に寄っていっていたのは、もう完全に()()()()になっていたからだ。
 そんな、理由としては恥ずかしいことで頭突きを食らったんだから、正直心配とかされるとなんか惨めだけど……。


(……上手いよね)


 逃れられない言い方。けれど、捉えられてしまった方が嬉しくなるような柔らかさ。そういうのも全部。全部全部。こいつのすごいところ。


(……くすぐったい)


 触れているやさしい手は、さっきまでの痛みさえ吸い取ってくれるようで。でも次は、そこへ痛みとは違う熱が集まっていくのを感じる。


(……見られない)


 くすぐったいのは、何も額だけじゃない。
 冗談を言ったはいいものの。撫でている手を取ったものの。本当に冗談だと、間違って欲しくなくて真っ直ぐ見つめたものの。……反対に見つめられると。そんな瞳で見つめられて、見返せるほど。今のオレは、純粋じゃいられない。


(……いや、オレそもそも純粋じゃないけど)


 言葉を紡ぎながら、少しでも平静さを取り戻すように。
 じゃないと、なんかもう……いろいろヤバくて。限界で。


(それもこれも、全部――)


 目の前のこいつが、かわいいことするのが悪いんだけど。
 けれど、この言葉は心の中でさえも紡がれることはなかった。