――ゴンッ!
……とかなんとか思ってても、実際そう簡単には上手くいかないもの。
しかもオレだし。そう簡単に、オレがこんなことできると思う? 答えはもちろん否。
(あー。らしくない。オレは、こんなこと言うような奴じゃない)
頭突きを食らって目が覚めた。いや、そんなことを思ってたのもあるけど、頭に寄っていっていたのは、もう完全に溢れそうになっていたからだ。
そんな、理由としては恥ずかしいことで頭突きを食らったんだから、正直心配とかされるとなんか惨めだけど……。
(……上手いよね)
逃れられない言い方。けれど、捉えられてしまった方が嬉しくなるような柔らかさ。そういうのも全部。全部全部。こいつのすごいところ。
(……くすぐったい)
触れているやさしい手は、さっきまでの痛みさえ吸い取ってくれるようで。でも次は、そこへ痛みとは違う熱が集まっていくのを感じる。
(……見られない)
くすぐったいのは、何も額だけじゃない。
冗談を言ったはいいものの。撫でている手を取ったものの。本当に冗談だと、間違って欲しくなくて真っ直ぐ見つめたものの。……反対に見つめられると。そんな瞳で見つめられて、見返せるほど。今のオレは、純粋じゃいられない。
(……いや、オレそもそも純粋じゃないけど)
言葉を紡ぎながら、少しでも平静さを取り戻すように。
じゃないと、なんかもう……いろいろヤバくて。限界で。
(それもこれも、全部――)
目の前のこいつが、かわいいことするのが悪いんだけど。
けれど、この言葉は心の中でさえも紡がれることはなかった。



