「……およ?」
踏み込むは、怖かったはずだ。自分が作ったわけじゃないけど、作ったも同然。しかも最低の代物で。
その効果を知っているにもかかわらず手を出した皇自体はもっと最低だけどな。冷静さを欠いていた……で事なきを得ようとしてる奴らなんか、ここには山ほどいやがる。
「……??」
これからは、ここもいい風に変わっていけばいい。そもそも悪くなんてさせないか。なんせ、一際やさしいアオイちゃんに仕えてた奴が無事、帰ってきたんだからな。
「それで? ヒナタ。お前は一体何を訴えているんだ俺に……」
「あ。モノローグ終わりました?」
「ひっ、ヒナタくん。そこで喋られるとわたし禿げる」
「毛根が刺激されて逆にものすごい勢いで生えるかもよ」
「お願いだから喋らないでー……」
アオイちゃんの肩に肘を置いて、アオイちゃんの頭に顎を置いて、しゃべる度にアオイちゃんの脳天を攻撃して……。
「お前は一体何がしたいんだ……」
「カエデさんにそーだん」
「は?」
「え?」
言い方的に、ものすごいどうでもよさそうな相談だな、そりゃ。もうちょっとアオイちゃんに抱きついてればよかったか。
「カナタさんからものすごい文句のメールが来て」
「は? ああ。それで?」
「何かあったら守ってあげる……とか言うんで、男のオレとしてはちょっと複雑ー。というかだいぶ複雑ー。もっと言うと超複雑ーって感じなんですよねー」
「えっ! そ、そんなに? ごめん……」
「だから、今からちょっとだけカエデさんと男同士の会話をするから、あんたは先行っててね」
「は?」
「えっ!? ……むう」
そんなことを言ったかと思ったら、ヒナタは顎を置いたままアオイちゃんのほっぺたを押したり抓んだりして遊び始めた。
……いや。でも多分、アオイちゃんは……。
「い、行けにゃい! どこに行けばいいにょ!?」
「一回ここ来たんでしょ。いや、二回……三回か」
「目新しいものがあり過ぎて、道順は覚えようとしなかった!」
「……やっぱバカか」
「んむぅー……!!!!」
そういえば、屋敷内をキラキラした目で見てたっけな。道明寺には無いものもあったりしたんだろう。興味津々なのはいいことだけど……いつかそのまま得体の知らないところに行かないか、ものすごく心配だ。
「……じゃあ、大股10歩進んだところで、いい子にして待ってて」
「ん? ……。……うんっ! 了解した!」



