「え……! か、カエデさんが謝ることなんて……」
「俺もいろいろやったから。でも、やっと助けてやれた。本当に……よかった」
はあと吐いた息は、心からの安堵。そっと腕から解放してやると、それがわかったのか目の前には今にも泣きそうな顔。そんな彼女に小さく笑いながら、わしゃわしゃと雑に頭を撫でた。
泣く必要なんてどこにもない。必要があるのは、君が得意な、笑顔だけだ。
『ものすごく会いたいんだけど、ものすごく会うのが怖いんだけど、どうしたらいい!?』
『んなもん知るか。アオイちゃんをジャガイモだと思えばいいんじゃねーか』
『カエは俺のあおいをジャガイモだと思ったことがあるの!?』
『あーそろそろ出迎えに行かないといけないんで。あと、こいつの世話頼んでもいいですか』
『はい。ほんとご迷惑をお掛けして申し訳ないです』
『いえ。慣れてるんで』
『カエー!!!!』
出迎えの頃合いも近かったけど、どっちかって言ったら、カナタの相手するのが面倒になったから早く出てきたんだったな、そういえば。
「アオイちゃん。カナタ来てるぞ」
「あ。無事に来られたんですね」
「お。それは何があったか知ってんだな」
「ヒナタくんに、文句のメールを送りつけてきたので……」
どうやら今のカナタに味方はいねーみたいだな。今ついてもらってる彼女も、話半分に聞いてるみたいだし。そう思ったら手慣れたもんだな。だいぶブランクあるってのに。
「アオイちゃんに会うのも、まだちょっと怖えっつってんだけど、アオイちゃんと会ってからじゃないと、その他大勢に会うのがもっと怖いみたいなんだ。今小部屋の隅っこで縮こまってる」
「おう。なんてこったい」
「だから、皆さんと会う前に会ってやってくれな」
「……はいっ。もちろんそのつもりです!」
やっぱり。アオイちゃんはいい子だな。
初めて会ったのは、トーマが俺のところへ連れて来た時。その前から一応仕事として、アキ周辺の人物を調べてたりしたけど……。アオイちゃんの存在を知ったのは、その時だったな。
アキと一緒に生徒会をするって言うんで、他のメンバーはいつもの奴らだったし、オウリやツバサがいたから何かあったら気付いてくれると思っていた。
……けど、そこへ踏み込んできてくれたんだよな。アオイちゃんは。



