(それから無事にバカ兄弟は帰ってきた……)
でも、肝心の二人の姿が見えないんだが。あのバカたちよりも遅いとか。
「……まさか暴走したヒナタがアオイちゃんをお持ち帰り――「……きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何お仕置きって何――……」……いや、完全にアオイちゃんの方が暴走してたな」
姿が見えないと思ったら、それらしき姿がものすごい勢いで俺の横を走り抜けていった。……そういや背中に、なんかぶら下がってたな。
流石の俺も、あの勢いを止めに入るようなことしたら、命がいくつあっても足りねーわ。あの勢いのアオイちゃんにしがみついていられる奴の気が知れねー……。
「あ! カエデさーん!」
(……お)
流石アオイちゃん。軌道修正早えな。それにもうあのスピードで走ってねーから、取り敢えずは安心だ。
「……いっといで」
「うんっ! かーえでさんっ!!」
「うわっと……。……どうされましたか?」
飛びついてきたアオイちゃんを、そっと腕の中へと収める。
……こんなにも細くて小さいのに。もっと早く、いろんなことに気付いてやれればよかったな。
「わあー……。っ、かえでさんっ」
「あんま抱きつくと、カエデさんにバカが移るよ」
このバカにはいろいろ振り回されたけど……ほんと、よく頑張ったな、お前も。
けど今、こうしてアオイちゃんは帰ってきたんだ。そのバカと一緒に。だったら、過去を悔いるよりも先に、言わないといけねーことがある。
「……おかえり。アオイちゃん」
「……! はいっ。ただいまですっ!」
おっさんの俺にまで嫉妬剥き出しのバカに呆れながら。小さな少女を、壊れないようにそっと抱き締めた。
「ごめんなさい。カエデさん……」
それからすぐ。彼女からは俺への謝罪が何度も零れた。
「たくさんたくさん……。ごめんなさい……」
アオイちゃんが謝る必要なんか、どこにもない。俺らはちゃんと、アオイちゃんの事情は知ったんだ。……知れて、本当によかった。
けれどきっと、謝らずにはいられないんだろうと思ってた。だから素直に受け取っておく。それから……。
「……俺も。いろいろごめんな」
彼女と彼を、今か今かと待ち構えている人たちの中には、誰も彼らを責めようとする人はいない。ただ、おかえりと。よく頑張ったと。一声かけたくて、一目元気な姿を見たくて、声を聞きたくて。うずうずしている人たちばかりなんだから。



