「足止まってる」
「……ヘイ」
「アキくん家まであと少しだよ」
「……ヘイ」
「ていうかなんで道わかんないの? アキくん家から花畑行ったんでしょ? 泣きに」
「ヘ、ヘイ」
あれは、無我夢中で飛び出してたらいつの間にか知ってる道に出ていて、それから花畑に行けたんです。奇跡なんですー。
「頭いいの。バカなの。どっち」
「……紛れもなく後者です」
今は、そういうことをハッキリ言ってくれって言ったわけじゃないんですけど……頑張るよ? 頑張るけど……なんかすみません。
「……オレ、犬じゃないからさ」
「……んん?」
聞こえたのは、そんな言葉。
ヒナタくんは犬じゃないよね? それわたしだよね? あなたそれ使ってる悪魔だよね?
「待て、って。多分そんなにできない」
「……!」
けれど、彼がそう言った言葉の意味に、甘く苦しく胸が締め付けられる。
「待つくらいなら、オレが行きたい」
「……ヒナタくん」
力の入る回された腕に。切なげに紡がれる言葉に。悔しげに零れる吐息に。彼への愛おしさが増した。
「……そう言ってくれて、本当に嬉しい。ありがと」
でも……それでも。
「これはわたしの問題だから」
「そう言うだろうから。……嫌われたくないから、待っとく」
「待たせないよ」
でも、かといってその問題をお粗末にしたくはない。わたしだって嫌われたくないからね。きちんとわたしの言葉で。ちゃんと、伝えたいから。
「じゃあ今日までね」
(……ん?)
空耳が聞こえた気がした▼
不思議に思ったわたしは、一度足を止めて発信源を探す。
「んー」
目の前にスマホ画面が現れた▼
彼はどうやら、その画面をわたしに見せたいようだ。何があるのだろう、と見てみると……。
「ん」
そこにいたのはとってもかわいいワンちゃんだった▼
え! すごいね! なんかお鼻が大きいよ! ただでさえ小っちゃくてかわいいのに、どうしてこんなふうにもっと愛らしく撮れちゃうのかな? ヒナタくんすごーい!!!!



