すべての花へそして君へ①


『考え事は『言ってあげられる言葉』って言った。もちろんそれも考えたけど』


「……。ねえ。ひなたくん……?」

「ん? ……なあに」


“どっちかって言ったら、それを言ったあとのことばっかり考えてた”


「……どうなると。思ったの……?」

「ん?」

「悪い方……って?」

「……? ……ああ。だってさ」


『ヒナタくんのことだから、悪い方にばっかり考えてたんでしょ』

『当たり。流石。よくわかってるね、オレのこと』


「……言ったでしょ? だってオレは――……」


 ふっと緩められた腕の間から、そっと寄せられる額。近くなった距離に一瞬だけ驚いたけど、そのあとすぐ、ふわって顔が綻んでしまった。


「ははっ。……やっぱズルいよ。ひなたくん」

「なんで? オレは、バカみたいに飛び跳ねながら、バカみたいに笑ってるあおいが見たかったのにー」

「もうっ」


 近すぎて見えない、目と鼻の先。


『オレは、あおいを泣かせたくないんだって』


 ゼロの距離にいる彼が、小さく笑っているような気がしたから。



「だから、……笑っててね? ずっと」

「うんっ。……ヒナタくんも」

「それはあおい次第だよ」

「え。な、何か芸でもしたらいいのかな……」

「あおいが、……飽きずにオレのこと、見ててくれれば」

「……わたしも」

「え。絶対オレ、見てて飽きることないって自信あるけど」

「それはわたしがバカでアホでマヌケのド変態だからですか」

「正解。流石」

「もうっ」