『考え事は『言ってあげられる言葉』って言った。もちろんそれも考えたけど』
「……。ねえ。ひなたくん……?」
「ん? ……なあに」
“どっちかって言ったら、それを言ったあとのことばっかり考えてた”
「……どうなると。思ったの……?」
「ん?」
「悪い方……って?」
「……? ……ああ。だってさ」
『ヒナタくんのことだから、悪い方にばっかり考えてたんでしょ』
『当たり。流石。よくわかってるね、オレのこと』
「……言ったでしょ? だってオレは――……」
ふっと緩められた腕の間から、そっと寄せられる額。近くなった距離に一瞬だけ驚いたけど、そのあとすぐ、ふわって顔が綻んでしまった。
「ははっ。……やっぱズルいよ。ひなたくん」
「なんで? オレは、バカみたいに飛び跳ねながら、バカみたいに笑ってるあおいが見たかったのにー」
「もうっ」
近すぎて見えない、目と鼻の先。
『オレは、あおいを泣かせたくないんだって』
ゼロの距離にいる彼が、小さく笑っているような気がしたから。
「だから、……笑っててね? ずっと」
「うんっ。……ヒナタくんも」
「それはあおい次第だよ」
「え。な、何か芸でもしたらいいのかな……」
「あおいが、……飽きずにオレのこと、見ててくれれば」
「……わたしも」
「え。絶対オレ、見てて飽きることないって自信あるけど」
「それはわたしがバカでアホでマヌケのド変態だからですか」
「正解。流石」
「もうっ」



