『だから、考えてたことがわたしのことでいっぱいだったから、それだけで嬉しい』
「…………」
『それから、ちょっと考え事』
『か、かんがえ、ごと……?』
『そう』
もしかしてヒナタくん。『言ってあげられる言葉』って……。
『正直あんたのこと、めっちゃ変な奴だと思ってる』
「……オレも、だよ」
『何回も言ってるのに。捻くれてても、不器用でも、ネガティブでも。ツンでもデレでもひなたきゅんでも』
『え。……後半おかしい』
『どんなヒナタくんでも!』
(……ヒナタくん)
『わたしは、……嫌じゃないよ?』
「……いっしょ」
『ま。人間でも人間じゃなくても』
『いや、人間だから』
『人間じゃなくても。……あおいは嫌じゃない』
(……ひなた、くん)
『オレだって、怖くて聞けない』
「……一緒だよ。オレも」
『ヒナタくんにはわたし、絶対に嫌われたくないんだ』
(ひなたくん……)
小さな声で何度も。何度も……なんども。そう言葉を零す度、強くなる腕の力。苦しいのに、その強さが温かくて、嬉しくて。わたしの方から擦り寄ると、応えるように彼もまた、頭を寄せてきてくれた。
「オレも、……一緒」
『わたしはどうやったって、ヒナタくんが好きなんだ』
“こんな関係になった今。わたしはヒナタくんと、どういうふうに接していけばいいのかな”
「全部。……一緒だよ」
『わたしは、……そのままのヒナタくんが好きだから』
「……ひなた、くんっ」
「ん……?」
それはまるで、魔法の言葉のようだった。
立ち込めていた黒い霧を、吹き飛ばすことができるほど強いものなのに。その風が通っていく度に、甘く……やさしく……温かく……包み込まれるようで。
「ひなたくんっ」
「……うん」
わたしが、そのままでいいと彼に伝えたように。
たとえバカで、アホで、マヌケでも。オタクでも変人でも変態でも。彼もまた、そのままのわたしでいいと。そのままがいいんだと。嫌いになんて、なるわけないと。そう、教えてくれた。
……ものすごく。本当にものすごく、遠回りだけど。
たとえ今までと少し関係が変わったとしても、それはただの関係だけだ。わたしたちは、わたしたちだから。無理に変わろうとしなくていいんだ。そのままで、よかったんだ。
……ほんと。悩んでた時間が勿体ないや。



