すべての花へそして君へ①


『だから、考えてたことがわたしのことでいっぱいだったから、それだけで嬉しい』


「…………」


『それから、ちょっと考え事』

『か、かんがえ、ごと……?』

『そう』


 もしかしてヒナタくん。『言ってあげられる言葉』って……。


『正直あんたのこと、めっちゃ変な奴だと思ってる』


「……オレも、だよ」


『何回も言ってるのに。捻くれてても、不器用でも、ネガティブでも。ツンでもデレでもひなたきゅんでも』

『え。……後半おかしい』

『どんなヒナタくんでも!』


(……ヒナタくん)


『わたしは、……嫌じゃないよ?』


「……いっしょ」


『ま。人間でも人間じゃなくても』

『いや、人間だから』

『人間じゃなくても。……あおいは嫌じゃない』


(……ひなた、くん)


『オレだって、怖くて聞けない』


「……一緒だよ。オレも」


『ヒナタくんにはわたし、絶対に嫌われたくないんだ』


(ひなたくん……)


 小さな声で何度も。何度も……なんども。そう言葉を零す度、強くなる腕の力。苦しいのに、その強さが温かくて、嬉しくて。わたしの方から擦り寄ると、応えるように彼もまた、頭を寄せてきてくれた。


「オレも、……一緒」


『わたしはどうやったって、ヒナタくんが好きなんだ』


“こんな関係になった今。わたしはヒナタくんと、どういうふうに接していけばいいのかな”


「全部。……一緒だよ」


『わたしは、……そのままのヒナタくんが好きだから』


「……ひなた、くんっ」

「ん……?」


 それはまるで、魔法の言葉のようだった。
 立ち込めていた黒い霧を、吹き飛ばすことができるほど強いものなのに。その風が通っていく度に、甘く……やさしく……温かく……包み込まれるようで。


「ひなたくんっ」

「……うん」


 わたしが、そのままでいいと彼に伝えたように。
 たとえバカで、アホで、マヌケでも。オタクでも変人でも変態でも。彼もまた、そのままのわたしでいいと。そのままがいいんだと。嫌いになんて、なるわけないと。そう、教えてくれた。
 ……ものすごく。本当にものすごく、遠回りだけど。

 たとえ今までと少し関係が変わったとしても、それはただの関係だけだ。わたしたちは、わたしたちだから。無理に変わろうとしなくていいんだ。そのままで、よかったんだ。
 ……ほんと。悩んでた時間が勿体ないや。