「……ねえ、あおい」
「嫌じゃない」
「え」
「何回も言ってるのに。捻くれてても、不器用でも、ネガティブでも。ツンでもデレでもひなたきゅんでも」
「え。……後半おかしい」
「どんなヒナタくんでも!」
「……近所迷惑」
照れ臭そうな彼の手を握って。握って……握って。
「わたしは、……嫌じゃないよ?」
手を握った時からずっと言ってる。忘れちゃったなら、何度だって言ってあげるよ。
「……ふう」
ニコッと笑いながら、彼が聞きたがっていたであろう言葉を伝えた。真っ直ぐに受け止めてくれた彼は、わたしの答えに、ほんの少しだけ頬を緩めて小さく笑ってくれた。……にもかかわらず
「……ふう」
これで三度……いや、四度目だ。ため息ではない息を、彼は吐いている。……何故?
「えっと……。ヒナタくん?」
『君は一体、何をしているのだい?』そんなニュアンスで、一応名前を呼んでみる。
「精神統一」
「ほへ?」
「流石にもう、暗いからってここで襲うのはマズいと思って」
「おそっ?!」
「というのは冗談で」
いや、あなたの冗談、大抵冗談じゃないこと多いから。でも、今の発言を冗談と受け取っておかないと、なんかヤバそうな気がするぞ……?
「そう、言ってくれるんだろうなって……」
「……ん?」
さっきの冗談を、突っ込むべきか、突っ込まずにスルーしておくべきか、結構真剣に悩んでいた時。そう呟きながら立ち上がったヒナタくんに。
「……っ、思ってたっ」
「え、うわ……っ!」
いきなりグイッと上から引っ張り上げられた。
一体全体どうしたのか。やっぱりさっきのは突っ込んで欲しかったのだろうか。そんなどうでもいいことをまた、結構本気で考えたのもほんの一瞬だった。
「ヒナタ……、くん……?」
そのまま、ぎゅうぎゅうと。本当に音が鳴りそうなくらい強く、そして苦しくない程度に抱き締められてしまったから。
どこか、必死さが窺えるような力に、恐る恐る名前を呼ぶ。
「……う、ん」
かわいく頭をすり寄せてきながら返ってきた返事は、少し掠れていて。本当にどうしたのだろうと、不安が募った。
「……オレも」
「……え?」
『――オレが、言ってあげられる言葉』
「――!!!!」
『さっきのもそうだけど、オレはちゃんと言葉にしてあげられないから』
え。もしかして……。



