すべての花へそして君へ①


「……ねえ、あおい」

「嫌じゃない」

「え」

「何回も言ってるのに。捻くれてても、不器用でも、ネガティブでも。ツンでもデレでもひなたきゅんでも」

「え。……後半おかしい」

「どんなヒナタくんでも!」

「……近所迷惑」


 照れ臭そうな彼の手を握って。握って……握って。


「わたしは、……嫌じゃないよ?」


 手を握った時からずっと言ってる。忘れちゃったなら、何度だって言ってあげるよ。


「……ふう」


 ニコッと笑いながら、彼が聞きたがっていたであろう言葉を伝えた。真っ直ぐに受け止めてくれた彼は、わたしの答えに、ほんの少しだけ頬を緩めて小さく笑ってくれた。……にもかかわらず


「……ふう」


 これで三度……いや、四度目だ。ため息ではない息を、彼は吐いている。……何故?


「えっと……。ヒナタくん?」


『君は一体、何をしているのだい?』そんなニュアンスで、一応名前を呼んでみる。


「精神統一」

「ほへ?」

「流石にもう、暗いからってここで襲うのはマズいと思って」

「おそっ?!」

「というのは冗談で」


 いや、あなたの冗談、大抵冗談じゃないこと多いから。でも、今の発言を冗談と受け取っておかないと、なんかヤバそうな気がするぞ……?


「そう、言ってくれるんだろうなって……」

「……ん?」


 さっきの冗談を、突っ込むべきか、突っ込まずにスルーしておくべきか、結構真剣に悩んでいた時。そう呟きながら立ち上がったヒナタくんに。


「……っ、思ってたっ」

「え、うわ……っ!」


 いきなりグイッと上から引っ張り上げられた。
 一体全体どうしたのか。やっぱりさっきのは突っ込んで欲しかったのだろうか。そんなどうでもいいことをまた、結構本気で考えたのもほんの一瞬だった。


「ヒナタ……、くん……?」


 そのまま、ぎゅうぎゅうと。本当に音が鳴りそうなくらい強く、そして苦しくない程度に抱き締められてしまったから。
 どこか、必死さが窺えるような力に、恐る恐る名前を呼ぶ。


「……う、ん」


 かわいく頭をすり寄せてきながら返ってきた返事は、少し掠れていて。本当にどうしたのだろうと、不安が募った。


「……オレも」

「……え?」


『――オレが、言ってあげられる言葉』


「――!!!!」


『さっきのもそうだけど、オレはちゃんと言葉にしてあげられないから』


 え。もしかして……。