「ヒナタくん……? 寝ちゃったの?」
時刻はもうすぐ6時を差す。まだ、こうしていたい気もするけれど、流石にそろそろ支度をしなければいけない。
「……気持ちよさそう」
スヤスヤと。あどけない顔で、小さく寝息を立てている様子に、微笑ましくなりついつい頬が緩んだ。
「そんなに気持ちがいいですか」
……わたしの胸の上は。
まさかあのままの体勢で眠りこけるとは思わなかったけど。しかも腕はガッチリ回されてるし。
「……ヒナタくん。本当に寝てるの?」
そっと、眠っている彼の頭を撫でる。そしたら小さく「んん……。むにゅむにゅ……」と。かわいい寝言を言っただけで、それ以外の返事は返ってこなかった。……むにゅむにゅって、わたしのお胸さんのことですかね。
でも、どうやら本当にこの体勢で彼は寝ちゃったらしい。……かわいいけど。ちょっと困った。
(……写真撮りたい)
誰ですか。こんなかわいい子をここに置いていったのは。食べられるでしょ? 他でもないわたしにっ。
(……撮っていい、かな)
ヒナタくんだって、わたしの写真待ち受けにしてたしね。待ち受け……ロック画面には流石に恥ずかしいから、ホーム画面ぐらいにはしたい。でも、取り敢えずもう起きないと。写真はまた今度。いつでも撮れるんだから。多分。
「ヒナタくん起きて? わたし、支度しないといけないんだ。まだ寝かせておいてあげたいけど……お見送り、して欲しくて」
それまでに、自分の盗撮技術を磨いておこうかなと、そんなことを思いながら彼にそう声をかける。けれど、彼からの返事はなく、ただ小さくかわいく唸ってただけ。……録音もしようかな。
「うー……ん。……ごめんね? ちょっと失礼しま~す」
流石にそこまで来るとストーカーだわと考えを改め、起こすのは諦めて彼から抜け出そうとした。
「うわっ! ……と。……ヒナタくん? 起きてるの?」
無事にヒナタくんの腕から脱出してベッドから降りようとした時、服の後ろをツンと引っ張られた。でも、どうやらただ寝惚けているだけらしい。
「……ふふっ。かわいいっ」
こんなことを面と向かって言ったらまた剥くれちゃうんだろうけど。



