すべての花へそして君へ①


「……それで? お前、いつからアオイのこと好きだったんだよ」

「先にチカが言ったら教えてあげなくもない」

「投げ飛ばされた時」

「ドMだね」

「うっせ」


 吐ききったんだろう。そのあとチカは、オレにいろいろ聞いてきた。


「さあ。いつだったか」

「覚えてねーのかよ」

「そんなのどうでもいいくらい、綺麗だったんだよ」

「……そっか」

「泣き顔が」

「……最低だな」

「んなこと言われても。チカだってそう思ったんじゃないの?」

「思わない奴なんかいねーだろ。……でも」

「泣かせないよ。絶対」

「……よっぽど、笑ってる方がいいからな」

「うん」


 あいつを助けるために、どんなことをしてきたのか。まあ、全部逐一にとはいかなかったけど、大本だけ教えてあげたり。


「ははっ。敵わねーよ。お前には」

「敵うと思ってんの」

「愛想尽かしたらもらう約束もしてある」

「尽かすと思ってんの」

「思ってねえよ。どんだけべた惚れなんだよお前」

「それだけだよ」


 どうでもいい話をしたり。ふっと顔を上げたチカの顔は、やっぱり泣いたってわかるほどだったけど……。


「よかったな。すげえ嬉しい」

「……オレも、チカがちゃんと吐いてくれたから嬉しい」

「お前も相当ドMだな」

「何言ってんの。オレは生粋のサディストだよ」


 いつもの得意な笑顔で。本当に嬉しそうに笑ってた。
 ただ、ひとつだけ言わせておいて欲しい。


「届いてないって。そう思ってる?」

「あ?」


 こいつの誓いに入れた想いが、あいつに届いていないと。


「……思ってねえよ。ただ、オレと同じ想いは返ってこなかったんだなって、思っただけだ」


「それ以外のものは、たくさんもらったけどな」と。脳裏にあいつの姿を浮かべたであろうチカは、小さく笑みを浮かべていた。……でも。


「同じ想いを、……オレは返したんだと思うよ」

「……は」

「だって」


 じゃないと、わざわざ一人一人に返事をしてなんかいないだろと。


「……ひなた」

「大好きって。言われたんじゃないの? ……バカだねチカ。自分の想い以上の好きをもらってるのに」

「オレが欲しかったのは、今のお前のポジションだけどな」

「絶対あげなーい」


 まあ、そのポジションはまだオレもお預けなんですけどね。