「オレさ、見た目なんでもバリバリできそうなスペック高い奴だと思うじゃん?」
「あなたそれ自分で言いますか」
「でもさ、本当は何にもできないんだよ。めっちゃ不器用」
「……うん」
ぐっと握られた手を、わたしも同じように握り返す。一生懸命、その『言ってあげられる言葉』を言おうとしている彼の背中を、支えられるように。
「性格ひん曲がってるし」
「そうだね」
「ネガティブだし根暗だし」
「ははっ。じゃあ、これからちょっとずつ一緒に直していこうね」
「ものすっごいヘタレだし。頭の中花咲いてるし」
「ヒナタくん以上に、わたしの方がヘタレだし、頭の中花畑な自信があるよ」
「そうだね」
「ちょっとっ」
そこだけどうして顔を上げて言うかね、あなた。
まあ、本当のことですけどね。わたしも訂正はしませんよ。
(……ん?)
少しまだ俯いている彼は、もう片方の手を何か探しているかのように泳がせていた。……思わず掴んだ。
「……オレはさ」
――よかった、合ってた。
「……こんなオレは、王子じゃない。よっぽど、レンやツバサ、チカやアイ。みんなの方が、王子に向いてる」
「ヒナタくん……」
「いや、流石にもうなりたいとは思わないけど」
「ひなたくんっ……」
「それは、あんたがお姫様じゃなかったから」
「え」
「だからオレは、王子じゃない。あんたがお姫様でないのなら、オレも王子になろうとする必要なんかない」
「……わたしを勝手にお姫様だと勘違いしたのはヒナタくんだけど」
「言われるまではわからないよ。最後までオレは、あんたをお姫様だと思ってたんだから」
「……えっと」
上がってきた視線に。怖いくらい真っ直ぐな瞳に。繕っていない素直な言葉に。居たたまれなくなって、思わず視線を外してしまったけれど。
「あおい」
ぎゅっと握られた手が。わたしを呼ぶ声が。「逸らさないで」と言っているようで。
「……はい」
緊張で震えながら。掠れながら。再び視線を戻して、わたしも真っ直ぐ、彼の瞳を見つめ返した。
「……そんなに緊張しないでよ。オレまで緊張するじゃん」
「だ、だって……」
「言ったでしょ? 大したこと言わないから。ほんと、しょうもないことだよ」
「……それでも」
「ん?」
一度、そっと視線を外して。吸って……吐いて……。――吸って。
「……言った、でしょ? 考えてくれたこと自体が、すごく嬉しいんだって」
「……ありがと」



