すべての花へそして君へ①


「あ。ホクロ発見」


 わたしが知らない場所へ、熱い唇が音を立てて落ちてくる。


「……あっ、ん」


 出た声に慌てて口を塞ぎにかかるけれど、背中の敵は容赦なくわたしを攻めてきた。
 徐々に上がってくる熱に耐えながら、ズレそうになるブラを押さえながら、片手で口元を押さえていたけれど。


「んっ!? はっ、ひなたく」


 本当に容赦なく、お腹に回った腕までも上に上がってきた。咄嗟の判断で口元の手でその悪戯な手を止めにいったけど、そうしたらもう、口を塞ぐものはないわけで。


「んん……っ」


 いつの間にか首元まで上がってきた熱い唇に、肘で下着を押さえながら必死に声を出さないよう努めた。


「……声、聞きたいんだけどな」

「は、恥ずかしいから、出したくないんだけどな……」


 後ろから覗き込むように声をかけてきた彼に、少しだけ振り向きながら。一応、必死に訴えかけてみる。こんなわたしの要求を、ご主人様が呑んでくれるとは思ってないけど。


「……恥ずかしいんだ」

「……はい」

「嫌じゃ、ないんだ」


 ……絶対わかってて聞いてるし。
 わたしがヒナタくんにされて嫌なことなんて……ないのに。


「……そっか」


 嬉しそうに弾んだ音にもう一度振り返ると、音通りに笑っている彼がいて。ちゅっと頬に一つかわいい音を立てたら、スリスリって首元に擦り寄ってきた。
 そんな彼に小さく笑って、わたしも黒い髪に擦り寄った。


「嫌だったら本気で逃げてね」


 けれど、そんなかわいかった彼はあっという間に遠くの彼方へ~。
 耳元で吐き出した吐息に全身がゾクゾクと震えると同時、十分ご存じのわたしの苦手な場所を攻め始めた。


「んっ、あ……っ」


 耳だけならまだよかったかも知れない。いや、苦手な場所をそう何度も攻めてこないで欲しいけれど。
 ピッタリとくっついている背中の敵の手が、本格的に上を目指しに来ていた。

「んっ、やあ。……っん」


 まだ、その手だけならよかったかも知れない。それだけなら、防げる自信は100%あった。
 けれど、耳を攻められ首筋を攻められ。吸い付くような熱い唇に。「あおい」と求める熱い声に。「かわいい」と「好き」と、触れる度、わたしの体が跳ねる度、声を上げる度。「愛しい」と告げてくる甘い言葉に。次第に、わたしは抵抗できなくなっていった。


「……んあっ」


 そして、結局わたしが負ける。執念の粘り勝ち、とでも言うんだろうか。そこへとたどり着いた敵の手は、やさしくわたしを包み込んでいた。……変な声が出た。すごい。恥ずかしいっ。
 けれど、それ以上彼は動かない。……え? もしかして、あんなに激しく攻めてきたくせに寝たんですか、あなた。

 とか、ちょっと思ったからチラリと捻られる限り首を捻ってみた。


「……。え。な、何故?」


 何故頬を膨らませていらっしゃるんですか?
 なんでそんなむくれて……ここまでしておいてっ!!