すべての花へそして君へ①


「え。ガリガリじゃん」


 まあ無いわな▼


「食べてなかったからね」

「……そうだね」


 暗い声に慌てて振り返ると、やっぱり申し訳なさそうに顔を歪ませていて。「オレのせいだね」って。零れた言葉が、すごく苦しそうだった。


「すぐに元に戻るよ」

「……そう?」

「うん。だからまあ」

「……?」

「……戻ったかどうか、確かめたらいいんじゃない?」

「……ははっ。それじゃあ、遠慮なくそうするね?」


 直にお腹に腕を回したヒナタくんは、抱きつくようにわたしの背中にくっついてきた。


「あおい」

「ん?」


 ぐっと回った腕に力が入る。


「酷いことして、ごめん」

「……ヒナタくん」

「追い詰めて、……ごめん」

「……ヒナタくん、わたしは」

「苦しいつらいしんどい思い、いっぱいさせた」

「……」


「ごめん」と口にする度、強くなっていく腕。そこにそっと触れて、ポンポンと撫でて、大丈夫って、言ってあげた。


「あおいには、謝っても謝っても、きっと謝り足りない」

「いいよって言っても、ヒナタくんはきっと言うんだろうね」

「それは、あおいも一緒でしょ?」

「……うん。そうだね。その通りだ」


 だから……だからね? 


「ずっと、一緒にいてね」

「……あおい」

「どうしても謝りたかったら、謝ればいいんだよ。溜め込むことだけは、もうしないでね」

「……あおいもね」

「うんっ。だから、……ずっと、一緒にいればいいと思うよ?」

「……やっぱりあおいには敵わない」


 嬉しそうにそう零した彼は、ぎゅーっと後ろから抱きついてきた。
 何も心配することはない。不安がることはない。だって、ずっと一緒に居るんだもん。お互いがお互いを支え合っていけば。……それでいいんだよ。


 そして気付く。
 敵に後ろを見せている……と。