「え。ガリガリじゃん」
まあ無いわな▼
「食べてなかったからね」
「……そうだね」
暗い声に慌てて振り返ると、やっぱり申し訳なさそうに顔を歪ませていて。「オレのせいだね」って。零れた言葉が、すごく苦しそうだった。
「すぐに元に戻るよ」
「……そう?」
「うん。だからまあ」
「……?」
「……戻ったかどうか、確かめたらいいんじゃない?」
「……ははっ。それじゃあ、遠慮なくそうするね?」
直にお腹に腕を回したヒナタくんは、抱きつくようにわたしの背中にくっついてきた。
「あおい」
「ん?」
ぐっと回った腕に力が入る。
「酷いことして、ごめん」
「……ヒナタくん」
「追い詰めて、……ごめん」
「……ヒナタくん、わたしは」
「苦しいつらいしんどい思い、いっぱいさせた」
「……」
「ごめん」と口にする度、強くなっていく腕。そこにそっと触れて、ポンポンと撫でて、大丈夫って、言ってあげた。
「あおいには、謝っても謝っても、きっと謝り足りない」
「いいよって言っても、ヒナタくんはきっと言うんだろうね」
「それは、あおいも一緒でしょ?」
「……うん。そうだね。その通りだ」
だから……だからね?
「ずっと、一緒にいてね」
「……あおい」
「どうしても謝りたかったら、謝ればいいんだよ。溜め込むことだけは、もうしないでね」
「……あおいもね」
「うんっ。だから、……ずっと、一緒にいればいいと思うよ?」
「……やっぱりあおいには敵わない」
嬉しそうにそう零した彼は、ぎゅーっと後ろから抱きついてきた。
何も心配することはない。不安がることはない。だって、ずっと一緒に居るんだもん。お互いがお互いを支え合っていけば。……それでいいんだよ。
そして気付く。
敵に後ろを見せている……と。



