「それくらい? 悩んでたのは」
「うんっ! おかげで落ち着いたよー。ありがと」
「いいえ」
笑顔で返すと、彼も嬉しそうに頬を緩ませながら頭をポンポンと撫でてくれた。……ふふ。わたしの方が年上なのにな。こうされてまた喜ぶなんて、やっぱりわたしは子どもだ。まあ、それもヒナタくんにならいいかなって思うけ――
「じゃあオレから文句ね」
……思ってたけど、ポンポンだったはずの手は、ズシっと重みを増して、わたしの首の筋トレを手伝ってくれていた。
おかしいな。大事にしたかったはずなのにな、この大きな手。今は、その手を退けたくて仕方がないんですけども。
「も、文句とは……」
「まあ、言いすぎかも知んないけど」
「え?」
もう一度だけ、ポンと叩いた手は離れていき、彼は後ろに手をついて天井を見上げるような体勢になった。……離れていった手が寂しくて。さっきはその手を追いかけていく勇気はなかったんだけど。
「……」
服の裾を掴んで、そっと彼の方へと寄り添う。
「……。……本当に、したいことってないのかな、って」
「え?」
「真っ白だったけど、この先もあおいの中にオレはいるんでしょ?」
「え……? う、うん。いる……よ?」
「なのにさ……」
「……??」
……オレと、したいことって。ないのかなって。……思って。
だんだんと尻すぼみになる声には、徐々に強くなる照れの色。そんな恥ずかしそうな彼に、ハッキリとわたしは言ってやった。
「特には」
「え」
「だって、まさかヒナタくんとこうしていられるなんて思ってもみなかったし」
「……まあ、オレもだけど」
「だから、それもこれからいろいろ見つけたらいいんじゃないかな?」
「……これから」
「そう! きっといろいろ出てくると思う! あ。そうだ。今思いつくのは、ヒナタくんの小っちゃい頃の写真見たり、ヒナタくんの手品見たり、ヒナタくんと一緒に写真撮ったりしたい!」
「……ははっ。いっぱいあるじゃん」
「いっぱいいっぱい、ヒナタくんといろんなことしたいな。いっぱい思い出、作ろうね?」
「……うん。思い出、いっぱい残しておこう」
「うんっ」
何も焦ることはないんだ。さっき、君が言ってくれたんだから。これからは、たくさんたくさんあるから。……だから、二人で一緒に、いろんなことをしよう。
「特にはないけど、……今はわたし、したいことしてるよ?」
「え?」
「ヒナタくんと、くっついてたい」
「……」
特に、したいことはない。ただ……わたしは。
「ヒナタくんと、こうしていられるだけで幸せなんだあー!」
「うわっ!」



