お着替えを無事完了したわたしは、扉を開けてむくれている彼に言ってやりたくなりました。『いや、あなたがしようとしてたことも犯罪だからね』って。あれだよ? ストーカーじゃなくって、覗きっていう犯罪ね。
鍵閉めたあと、結構長い間ドアと格闘してたでしょ。知ってるんだからな。音丸聞こえやったからな。『ぼく、何もやってません』って顔しててもバレてるからな。
「いや、ついでにと思って」
「何がついでだこら」
しかも開き直っちゃったし。いや、だからって見られても警察さんに通報することはありませんけどね。あなたじゃないんで。
「着替えるの遅ーい。何やってたのー」
(……本気で穴掘ろうとしてたとか言えない)
「ていうか何? どこの試合に行くの、今から」
「え? へ、部屋着……」
「ユニフォームじゃん。背番号入ってるんだけど」
「……レ、レプリカ」
「なに? またなんかのアニメ?」
コクリと小さく頷く。
「……なに。オレと試合するの。気合い十分だね」
「欲しいと思って買ったけど、外に着ていけなくて。イベントも。あた。当たらな。くて」
「(スルーされた)」
短パン結構丈短いから、きっと履けるの部屋でだけだし。上は、なんでかシントが注文サイズ間違えてダボダボで、短パン見えてないし。
「(……オレは、試されてるんだろうか)」
結局、部屋でしか着られないし……と思っていたら、腕をやさしく取られた。
「取り敢えず髪乾かそ。風邪引く」
そう言われ腕を引かれ、テクテクテクと鏡台前に座らされた。え? っと思った時には既に、ブォオオーンという凄まじい風が。
「ひ、ひなたくん! 流石に自分でやります!」
「ダメでーす」
「えっ。な、何故??」
「お・し・お・き」
「ええ? なに??」
ドライヤーの音が大きすぎて、上手く聞き取れなかった。髪が乱れに乱れまくっている中、なんとかして聞き取ろうと鏡に映った彼を見つめる。……お、し、お、き……?
「……へ?」
いや。お仕置きじゃないでしょ、これ。ていうか今、その存在すっかり忘れてましたけどね。
「でも、これってわたしじゃなくてヒナタくんに刑が執行されてやしませんか??」
「そんなことない」
「え。……でも」
「今あおいは『オレにいっぱい触られる』っていうお仕置きをされてるの」
「……え??」
それって、どちらかと言えばご褒美なのでは? 至れり尽くせりだし、わたしだって、ヒナタくんに触りたいし、触られた――



