すべての花へそして君へ①


 こんな、緩い会話ができることも。ヒナタくんが素直にそう言ってくれることも。……なんだか嬉しくって、頬が緩んでしまう。


「わたしも。ヒナタくんがいなくて寂しかった」

「え。……なに。そんなに一緒に入りたかったんなら言ってくれれば」

「ち、ちがうからっ! 髪染めてたの知らなくて、ヒナタくんの姿が見えないだけで不安だった」

「……そっか」

「だからね? わたしも一緒。だからね? 今すごく嬉しいんだ」

「……うん。オレもだよ」


 見上げたそこには、少しだけ熱っぽい瞳の彼がいて。ゆっくりと近づいてくる唇に、わたしはそっと、目を閉じた。

 ………………ん?


「んっ。ひなたく、どこ触っ」


 言葉を紡ごうとしても、上から噛みつかれるように塞がれるし、抵抗しようにも彼の片腕の力が一向に緩まない。そして、もう片方の手が背中を伝い、どんどん下がってきていて……。


「……ぷるんぷるん」

「うぎゃー!! 感想は言わなくていいっ!!」

「……ふわふわ?」

「言い直さなくていいっ!!」

「小尻だね」

「やめてー!!!!」


 思う存分楽しまれてしまった▼


「ははっ。……怒った?」

「……えっち」

「裸族よりはマシだと思うけど」

「シャワーを裸で浴びないんですかあなたは!」

「あおいから飛びついてきたんでしょ? 裸で」

「飛びつく予定ではなかったけどね!?」

「飛びついてくると思ったけどね、オレは」


 だから、準備万端だったでしょ? と。何故か得意げなんですけど。


「じゃないと今頃オレに裸見られてたよ?」

「……ありがとうございますう」

「いいえ? それじゃあ再開しても?」

「……ちょっと。遠慮しますう」

「そっか。それは残念」


 全然残念そうでない彼の顔には『ちょっと満足です』って書いてあるような気がした。
 キュッキュッと毛先の滴を拭いてくれたあと、ニッコリ嬉しそうに笑いながら、彼はようやく脱衣所を出て行ってくれました。


 ガチャンッ。
 堪らず鍵を閉めた。

 ガチャ。……ガチャガチャ。

 コン。コンコン。

 ドンドンドンドン。

 ちょっと、怖かった。
 でも、鍵は閉めてよかったって、体全体で思いました。(まる)



「……はあ」


 その閉めた扉に背をつけ、大きくため息を零す。


「……ぅゎっ」


 堪らず出た声をきっかけに、ブワッと全身が熱くなった。


(わああああ)


 思わず自分の体を抱き締めた。立っていられずに、そのままズルズルとへたり込む。
 熱い。赤い。……ものすっごい恥ずかしいっ!!


(……裸で、抱き締められてしまった)


 タオルあったけど。


(は、裸で。ちゅーしてしまった)


 タオルあったけどっ!


「……さ」


 さわられ、ちゃった。おしり。タオル越しだけど。
 ……しかも、い。いやじゃ……なかった、とか。


(地球の裏側まで穴掘って埋まりたいいぃぃっ!!!!)