すべての花へそして君へ①


 ……熱い。当たる度、焼けてしまいそうなほど。

 ……苦しい。熱い熱い熱が、わたしの呼吸さえも奪っていく。

 ……痛い。当たる度、バカみたいに跳ねる心臓が。

 ……肌が。


「どあちぃいいいっ!?」


 なんか熱いと思ったら、設定温度50℃になってた。


「つめたっ!」


 慌てて水を捻ったら、捻りすぎて頭から水を被ってしまった。


「……ちょっと落ち着こう。わたし」


 現在、ご主人様の命により、シャワーを浴びております。念入りに落としてこいと言われました。「匂うから」って。(※ちょっと気にしてる)


「……あおい?」

「っ!? はいっ!?」


 ピピピと設定温度を下げていると、ガラス戸の向こうに人影が。慌てて浴槽の中に隠れる。お湯張ってないけど。


「いや、さっき変な声聞こえたからさ」

「しっ、失礼な」


 ガラス戸。なんで脱衣所に普通に入ってきてるの彼。そこには、さっきシントの部屋から持って来た部屋着とお出かけ用の服と……。


「……Eの65」

「!?!?」


 ふ、普通に下着置いてるのにっ!!


「あれ。白とピンクがある」

(着てたヤツと持って来たヤツですっ)

「……あ。そういえば服。あおい。なんで服あるの? あのデカい鞄の中に入れてたの?」

(まだそこに居座るつもりですか、あなた……)


 入るつもりはなかったけど……お湯。溜めよ。気分的に、入浴剤いっぱい入れちゃろ。


「おーい。あおい?」

「……服とかは、シントの部屋から取ってきた」

「え。シントさんオレよりストーカーじゃん。下着ドロじゃん」

(完全に自分がストーカーだって認めていらっしゃる)


 ダァアアーと蛇口を捻ってお湯を溜ながら、同じぐらいの勢いで入浴剤もドバァアアーと入れながら。取り敢えず、既に彼はサイズ知っていらっしゃるし(※6巻参照)見られたので、下着に関しては吹っ切れることにした。


「いや、ヒナタくんがシントに送りつけろって言ったんでしょ?」

「は? なんのこと?」

「だからわたしの荷物だってば」


 わたし自身を追い詰めるために、部屋の中からほとんどのものが無くなっていった。まるで、初めからわたしなんていなかったかのように。


(ヒナタくんには言わないでおくけど……)


 正直、結構つらかったな。もちろん、全部嘘だったんだから今はほっとしてるけど。


「ちょっと今からシントさんのところ行ってくるね」

「えっ、い、今から……?」


 ――嫌な予感がしてならない。


「うん。きっと起きてるでしょ、あの人。……あ。でもそれよりも手っ取り早く電話したらいっか」

「……ど、どこに電話するのかな……?」


 ――嫌な予感しかしない。


「え。どこって警察に決まってるじゃん。匂いフェチで、元ご主人の下着を盗んで嗅ぎまくってますって。知ってる? 下着ドロは立派な犯罪だよ」

「だから!! あなたが送りつけろって言ったんでしょっ!?」

「ちょっと今大丈夫か聞いてくるね~」

「いやいや!! お店の予約みたいに通報を軽く言わないでっ!!」


 しかも、さっきまで見えてたヒナタくんの影が見えなくなってしまった。
 ヤバい。絶対ヤバい。折角わたしと一緒で罪を犯してないってわかったのにっ! シントがまさかの、下着泥棒で捕まってしまうなんてっ。……冗談だったら面白いけど、ヒナタくんなら本気でしかねない。


(お湯溜め始めたのにっ!!)


 猛ダッシュで匂いを落として(※気にしてるけど自分じゃよくわからない)、困ったご主人様を止めに、大急ぎで浴室を飛び出した。