すべての花へそして君へ①


「わたしがっ……。世界で一番の。幸せ者にしてやるっ……。覚悟しとけっ」

「ははっ。それ、今ここで言うんだ」


 相変わらずかっこよくて勇ましいなと思った。それでいて、何よりも愛おしいなと。
 ……けれど。服を掴んでいる手が、震えていた。それに、緊張してるのか、安堵してるのか。そんな息を、何度も何度も浅くついている。

 どうしたのかと思って口を開けたら。……小さな声で、かわいい言葉を紡ぎ出した。


「だから……。……一緒に。いて欲しい」

「……! ……あおい」

「心配、掛け合いっこする。ずっとずっと! ……そばに。いてほしいの」


 ……あー。もう。ほんと完敗。多分一生。こいつには勝てっこないわ、オレ。


「……あおい? 聞いてて」


 でも、流石にこればっかりは、負けられない。負けちゃいけない。
 そっと、ほんの少しだけ離れる。見下ろす先にいるのは、涙をいっぱい溜めた、彼女だけ。


「ずっとそばにいるに決まってるじゃん。離さないに決まってるじゃん」


 緊張しない? そんなわけない。でももう隠さない。もう借りることはない。
 今、伝えよう。ずっと……。ずっと。言えなかった言葉を。


「オレが、世界でも宇宙でもない。誰よりも何よりも、幸せにしてあげる。だから、誰よりも何よりも幸せになろう? ……好きです。あおいさん。オレの彼女に、なってくれませんか――」


 返事はなかった。その代わり、ぶつかる勢いで口を塞がれた。


「んっ。……すきですっ。ひなたくん。こんなわたしでよかったら。彼女にしてくださいっ」


 離れたかと思ったら、泣きながら顔を真っ赤にしながら、そんなことを言うもんだから――――。


「オレの大好きな彼女を『こんな』とか言ったから、お仕置きね」


 これ以上くっつけないくらいに、あおいの体を引き寄せた。あおいも、オレを求めるように、首に腕を絡ませた。



 これが、オレらの本当のはじまり。
 深く求め合った口付けは、彼女の涙の味がした。










「んはっ。ひゃっ」

「……あおい」

「ひっ。ひな」

「……ねえ」

「……? なに?」

「(クン。クンクンクン)」

「……。……??」

「シャワー浴びてこない?」

「……。え」

「ていうかシャワー浴びてきて」

「……え」

「シャワー浴び――」

「えっ。わ。わたしもしかして臭――」

「いや、そうじゃないから」

「えっ?」

「ただ……」

「……? ……ただ?」

「……やっぱ匂う」

「……!?」

「あおいじゃない匂いがする」

「……え?」

「それだけ……って、思ったんでしょ、どうせ」

「……。えっと」

「……妬きました」

「ぅえっ?」

「それだけでも。……妬きました。すみませんね」

「……ひなたくん」

「……なんですか」

「……かわい――「うるさい」――んんっ!」