「わたしがっ……。世界で一番の。幸せ者にしてやるっ……。覚悟しとけっ」
「ははっ。それ、今ここで言うんだ」
相変わらずかっこよくて勇ましいなと思った。それでいて、何よりも愛おしいなと。
……けれど。服を掴んでいる手が、震えていた。それに、緊張してるのか、安堵してるのか。そんな息を、何度も何度も浅くついている。
どうしたのかと思って口を開けたら。……小さな声で、かわいい言葉を紡ぎ出した。
「だから……。……一緒に。いて欲しい」
「……! ……あおい」
「心配、掛け合いっこする。ずっとずっと! ……そばに。いてほしいの」
……あー。もう。ほんと完敗。多分一生。こいつには勝てっこないわ、オレ。
「……あおい? 聞いてて」
でも、流石にこればっかりは、負けられない。負けちゃいけない。
そっと、ほんの少しだけ離れる。見下ろす先にいるのは、涙をいっぱい溜めた、彼女だけ。
「ずっとそばにいるに決まってるじゃん。離さないに決まってるじゃん」
緊張しない? そんなわけない。でももう隠さない。もう借りることはない。
今、伝えよう。ずっと……。ずっと。言えなかった言葉を。
「オレが、世界でも宇宙でもない。誰よりも何よりも、幸せにしてあげる。だから、誰よりも何よりも幸せになろう? ……好きです。あおいさん。オレの彼女に、なってくれませんか――」
返事はなかった。その代わり、ぶつかる勢いで口を塞がれた。
「んっ。……すきですっ。ひなたくん。こんなわたしでよかったら。彼女にしてくださいっ」
離れたかと思ったら、泣きながら顔を真っ赤にしながら、そんなことを言うもんだから――――。
「オレの大好きな彼女を『こんな』とか言ったから、お仕置きね」
これ以上くっつけないくらいに、あおいの体を引き寄せた。あおいも、オレを求めるように、首に腕を絡ませた。
これが、オレらの本当のはじまり。
深く求め合った口付けは、彼女の涙の味がした。
「んはっ。ひゃっ」
「……あおい」
「ひっ。ひな」
「……ねえ」
「……? なに?」
「(クン。クンクンクン)」
「……。……??」
「シャワー浴びてこない?」
「……。え」
「ていうかシャワー浴びてきて」
「……え」
「シャワー浴び――」
「えっ。わ。わたしもしかして臭――」
「いや、そうじゃないから」
「えっ?」
「ただ……」
「……? ……ただ?」
「……やっぱ匂う」
「……!?」
「あおいじゃない匂いがする」
「……え?」
「それだけ……って、思ったんでしょ、どうせ」
「……。えっと」
「……妬きました」
「ぅえっ?」
「それだけでも。……妬きました。すみませんね」
「……ひなたくん」
「……なんですか」
「……かわい――「うるさい」――んんっ!」



