「――ひなだぐんっ!!」
「ぐはっ」
心構えはしてた。多分タックル並みの勢いで来ることくらいも。してたんだけど、結構吹っ飛んだ。ベッドから落ちそう。だから真ん中に座ったのに……。
「うううぅぅ……。なっ。なんでわかるのおおぉぉ」
「は? え。そんなこと聞くの? 思う存分泣き叫ぶ前に?」
「じりだいっ!!」
「……そんなの、あんただからに決まってるだろ」
ぼろぼろと零れる涙ごと、細い体を抱き締めた。……と同時に匂うこいつじゃない匂いに正直、嫉妬で狂いそうだったけど、仕方ないから今日のところは取り敢えず我慢する。今日のところは。
「……わたしだから。わかるの?」
「あんただから、わかりたいって思うんだよ」
顔は見えなくなってしまったけれど。またいつものように服を掴んできた彼女を、ぎゅっと抱き締める。
「な。泣いちゃった」
「え?」
「泣かしちゃったの。みんな……っ。みんなっ」
「……そっか」
「わたしがっ。泣かしちゃったの。みんなのこと……。苦しめちゃった」
「は? いや、それ別にあんた悪くないじゃん」
「でも泣いてた! 嫌だったのっ。泣かせたかった。わけじゃないっ」
そう言って、本音を零してくれるから、まあちょっとは安心だけどね。……でも。
「あのさ、ツバサの時も言ったじゃん。しょうがないじゃん。あんたのこと、みんな好きなんだから。それで、なんであんたが傷付かないといけないの。やさしいにもほどがある」
「わたしは。やさしくなんてないんだよっ」
「えっ。ちょ、……どうしたの」
今度はオレが、折れそうなぐらいの力で抱き締められる。“ぎゅっ”どころの話じゃない。下手したら“ボキッ”っていいそう。多分もうすぐ……。
けど、なんでこいつはそんなことを言うのか。……ちょっと、よくわからない。
「やさしいのはみんななのっ。わたしは……。やさしくない」
「……どうしてそう思うの?」
「本当にやさしかったら。ちゃんと。きちんとお返事してると思う……。から」
(あおい……)
「嫌だったの。泣かれちゃうのも。嫌だったの。離れていって……。欲しくないの」
友達でもなくなってしまうと、そう思ったのだろう。
でも、それもさっき言った。ちゃんと聞いてたくせに。覚えてるくせに。
「だから、そんな奴らじゃないって言ってるじゃん。それは杞憂。無駄な心配。わかった?」
「やさしく……。ないもん」
「え? やさしくない方がいいの?」
「……」
(ああ。やさしくはありたいのね……)
今の何が、どこが、やさしくないんだか。返事なんかもらわなくても、みんなわかってるってば。これも言ったじゃん。
(……でも、伝えるって決めたのはこいつ自身)
それがどんな方法であれ、一応であったとしても、言えたんだ。ほんと、よく頑張った。



