すべての花へそして君へ①


 上手く笑えず、へにゃっとなったわたしに、彼も小さく笑い返してくれた。それから、ゆっくりと頭へ手が伸びてきて、やさしく撫でてくれる。


「信じられないね。オレも信じられない。あんたに罪はないってわかってたけど、でもどこか安心してる。わけわかんないよね」

「ううん。……でも。ほんと。信じられないよ」

「でもこれが真実なんだって。……わかってくれた? あんたには、何の罪もないんだってこと」

「うん。そう……だね」


 何もない、ということはないだろう。少なからずアイディアを出している時点で荷担しているのだから。
 でも、納得したと。そう言葉にしない限り、彼はずっと言ってきそうだから。これは、自分の胸の内にしまっておくことにしよう。


「また何かあったら朝にでも先生に聞くといいよ」

「うんっ。ありがと」


 ほっと安心したような表情になった彼は、頭をそっと引き寄せて、わたしを腕の中に閉じ込めた。
 はじめは、少しぎこちないような、わずかに震えているような彼にちょっと驚いたけれど、やっぱり彼のそばがあたたかくて。彼の体温が安心できて。わたしもゆっくり、彼の背中に腕を回した。


「よかったね。ほんと、……よかった」

「ひなたくんっ」


 自分のことのようにそう言ってくれるだけで。安堵とともに吐き出した声を聞くだけで。……涙が込み上げてくる。
 抱きつく手に、力が入った。


「……ちょっとは落ち着いた?」

「うん。……だいじょうぶ」


 もし一人だったら、まだ整理とかできてなかったかも知れない。いや、パニックだったかも知れない。


「そっか。なら、よかった」

「……うんっ」


 きっと彼がいてくれたから、こんなにすぐ落ち着いたし、パニックにならずに済んだ。倒れずに済んだんだ。


「……ありがと。ひなたくん」

「え? オレ? ……。じゃあ、どういたしまして」


 何度も何度も言っても、きっと足りないんだろう。だから、もうずっと。一生かけて言ってやろう!
 ありがとうって。……大好きだよって。