上手く笑えず、へにゃっとなったわたしに、彼も小さく笑い返してくれた。それから、ゆっくりと頭へ手が伸びてきて、やさしく撫でてくれる。
「信じられないね。オレも信じられない。あんたに罪はないってわかってたけど、でもどこか安心してる。わけわかんないよね」
「ううん。……でも。ほんと。信じられないよ」
「でもこれが真実なんだって。……わかってくれた? あんたには、何の罪もないんだってこと」
「うん。そう……だね」
何もない、ということはないだろう。少なからずアイディアを出している時点で荷担しているのだから。
でも、納得したと。そう言葉にしない限り、彼はずっと言ってきそうだから。これは、自分の胸の内にしまっておくことにしよう。
「また何かあったら朝にでも先生に聞くといいよ」
「うんっ。ありがと」
ほっと安心したような表情になった彼は、頭をそっと引き寄せて、わたしを腕の中に閉じ込めた。
はじめは、少しぎこちないような、わずかに震えているような彼にちょっと驚いたけれど、やっぱり彼のそばがあたたかくて。彼の体温が安心できて。わたしもゆっくり、彼の背中に腕を回した。
「よかったね。ほんと、……よかった」
「ひなたくんっ」
自分のことのようにそう言ってくれるだけで。安堵とともに吐き出した声を聞くだけで。……涙が込み上げてくる。
抱きつく手に、力が入った。
「……ちょっとは落ち着いた?」
「うん。……だいじょうぶ」
もし一人だったら、まだ整理とかできてなかったかも知れない。いや、パニックだったかも知れない。
「そっか。なら、よかった」
「……うんっ」
きっと彼がいてくれたから、こんなにすぐ落ち着いたし、パニックにならずに済んだ。倒れずに済んだんだ。
「……ありがと。ひなたくん」
「え? オレ? ……。じゃあ、どういたしまして」
何度も何度も言っても、きっと足りないんだろう。だから、もうずっと。一生かけて言ってやろう!
ありがとうって。……大好きだよって。



