すべての花へそして君へ①


 ――まずは薬について。
 彼女、望月紅葉という女性は、当初は確かにその薬の開発をさせられていた。そして無事、反応が出ないものを完成させてしまった。
 それを作る上で、彼女はただ用意されたものを使い、日々生産に明け暮れていた。作って……作って……。何個か作った上で、作らせていた三人は恐れてしまったらしい。

 本当にできてしまった、と。

 確かに作るように命令をしていた。けれど、これが世に出ると思うと、急に恐れを抱くようになったという。
 恐れた三人は、できてしまったそのものは自分たちだけで使うことにし、そして彼女にバレることがないよう材料をすり替えた。
 それを知らなかった彼女は、用意されたものまでの確認はせず、ただ間違った薬を作っていたのだという。


「その薬の判定結果が出たわ。……どうやら、ただの精神安定剤になってたみたいね。効能は低いようだけれど」


 それを聞いて、わかったんだ。オウリくんのお母様、カリンさんが服用してしまったのはその新しくできてしまった薬なんだと。
 でもそれは少しおかしい。その頃、薬はまだ開発段階だったと聞いている。だからそれは、まだ外へ出てはいないはずだ。

 ……なら、なんでカリンさんは。流産してしまったのか。
 わたしも、それからモミジさんも、てっきり飲み物に入れた薬が原因だと考えていた。


「……わたしの知る限り、皆さんそんなことはされてなかったと思うの……」


 けれど、そんなわたしたちが聞かされた話を、アオバさんが否定した。

 そこから推測するに、三人も葛藤していたのではないか。そしてカリンさんは、本当に精神的なもので流産をしてしまったのではないか、という結論に至ったという。

 彼女の証言を受けた公安は、カリンさんに話を聞いたらしい。画面越しに聞いた、モミジさんからの告発。その時は気が動転していたらしく思い出せなかったようだけれど、当時お腹の子のことを大事にしたいと、口にするものは十分に注意をしていたそうだ。

 だから、その頃一切外食はしていないと。市販のものは空けてすぐ口にしていたけれど、その他は自分が用意をしていたものだったと。彼女はそう証言したそうだ。


「まだね? その頃は何かに引っ掛かりがあったんだと思うわ。でもそれも、徐々に狂い始めて正常な判断ができなくなってしまったと思われるの」


 先生曰く、三人はモミジさんに間違った薬を作らせていたことさえも、わからなくなるほどになっていたのではないかと。思考回路が壊れていっていたと考えられることを、教えてくれた。